「決戦前の最終分析!日本がセネガルに勝利するために覚えておくべき7項目」

日本代表の2018 FIFA ワールドカップ ロシア大会は「代表史上最高」の出だしとなった。

前半開始早々、コロンビアの中心プレーヤーであるカルロス・サンチェスがペナルティエリア内でハンドを犯してしまい退場。さらに、そこで得たPKを香川真司がものにすると、その後、同点に追いつかれたが、CKから大迫勇也がヘディング弾で逆転。

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「ほとんどの時間を10人相手に戦う」という大きなアドバンテージを得た状態での結果であり、「いわくつき」という見方もあるようだが、勝利は勝利だ。続くセネガル戦でも日本中を沸かせるエンディングを迎えることを誰もが期待していることだろう。

しかし、その中で連日連夜のように各メディアで取り上げられるのが「セネガルの強さ」に関する報道だ。

「セネガルは本当に強いのか」、「付け入るスキがないのか」をテーマに、コロンビア戦に引き続き、今回もサッカーライターのカレン氏に分析を行ってもらうことにした。

Qoly(以下、――):コロンビア戦は「引き分けでも御の字」という雰囲気の中、まさかの展開の連続で勝ち点3を獲得しました!

カレン(以下、省略):嬉しさはもちろんありましたが、良くも悪くも見応えのある試合になりましたね。

仰るようにハプニングからのスタートでしたが、このような大きな大会ほど一種の「運」のようなものは重要になってきますし、第二戦目ではこの勝利がフロックでないことを証明して欲しいです。

試合を細かく見ていけば、ゲームプラン的にどうだったかというポイントはあるでしょう。

しかし、「勝てば官軍」ということでここではあえて言及しません(笑)

―しかし、あのような展開になると、前回コロンビアを分析したあの回はなんだったのか…となりますね(笑)

さすがに、試合展開までは読めませんでした…すみません。

ただ、個人的には、「この試合の鍵でありコロンビアの弱点である」と指摘していたコーナーキックから日本がゴールを奪ってくれましたし、各方面で触れていたキンテーロも結果を残したので、一応、「予想が的中している点もあった」ということで許してください(笑)

――さて、話は変わりまして、今回は第二戦目で戦うセネガル代表がテーマです。前回同様に簡単に特徴を、そして、日本が付け入るスキを分析して欲しいです。巷では「セネガルは強い」、「セネガルは守備が固い」という話がよくあがっているようですが…。

そういった雰囲気となるのは当然でしょうね。ポーランド戦であのような試合を見せたわけですから。

ただ、これまでセネガルを見てきた人間からすれば、「そんなに急に騒がなくても…」というのが率直な感想ではないでしょうか。

圧倒的な能力をもった選手が強烈ですし、フィジカルコンタクトの強さを活かした「ハメ込み型のゾーンプレス」も彼らの十八番でしたから、改めて驚くようなものではなかったです。

ワールドカップ出場が決まってから行われた強化試合では全く勝てず、本大会直前に行われた韓国との非公開の試合でようやく勝利するなど、得点力不足という問題を抱えていたので、そこが本大会ではどうなるかな…とは見ていましたが。

――その得点力不足という問題ですが、ポーランド戦では二つのゴールがありました。

しかし、いずれも「結果的にはゴール」という表現が正しいものだったと思います。

前述の日本戦と同様、サッカーは勝負の世界ですから「勝てば何も文句はない」という風潮もありますが、勝ったことと問題が解決したことは全く別です。

セネガルの一点目については、マネがポーランドのボランチ二人を吊ったタイミングでグエイが飛び出してきたこと、そしてきっちりシュートでフィニッシュしたことは褒められるべきでしょう。ですが、シュート自体のコースは甘く、チョネクの足に当たってコースが変わったことによる得点でした。

二点目についても、ニアングが自慢のスピードを見せつけたものですが、ポーランド側からすると、ピッチの外に出ていたはずのニアングがあのタイミングで戻ってくるとは思っていなかったでしょうし、「交通事故」にあったような感覚でしょう。

もちろん、あの状況でクリホヴィアクがバックパスするべきだったのか、CBのベドナジェクもGKシュチェスニと連携して対応が出来たのではないか、GKシュチェスニも数的優位でシュートがアバウトなニアングが相手であれば「飛び出さない」というプレー選択もあったのではないか…と、ポーランド側にも指摘するべきポイントはありました。

ですが、やはり、事故的の要素が強いゴールだったと言わざるを得ませんし、少なくとも「再現性のある崩し」でのゴールではないと思います。

――つまり、あのシーンを切り出して「強い」と評価するのは少々違うということですね。

そうですね。

あのゴールを除くと、ペナルティエリア内に侵入して決定機を迎えたのは、前半にショートカウンターから左サイドバックのサバリがニアングにスルーパスを送り、それをニアングが左足でシュートを放ったシーンぐらいでした。

右サイドからのクロスボールにディウフが飛び込むシーンは迫力がありましたが、ゴールの匂いを感じるものではありませんでしたし。

そのため、個人的な感覚としては「得点力不足」という件については、解決したとは思っていません。

ただ、「得点力不足」という表現は抽象的ですので、「攻撃時におけるグループ戦術の乏しさ」、「遅攻時におけるイマジネーションの欠如」と具体的に言語化するのが適切でしょうか。

まず、彼らの攻撃ベースには「マネを活かす」という考えがあると思います。

マネがボールを受け取れば、皆は彼のパスを呼び込む動きを行う、マネのポジションによって皆がポジションを修正するというイメージを持っているチームです。ですが、その一方で、マネ経由を除くと「グループ戦術」は皆無です。

あるとすれば、中盤の選手がサイドでボールを持った時にサイドバックがサポートに動き、そこからのクロス。そして、クロスに対しては最低二人がゴールに飛び込み、ファーポストやセカンドラインにも人を置くという簡単な約束事ぐらいでしょうか。

「細かいパス交換と動き出しで切り崩す」、「片方に相手を寄せてサイドチェンジへの展開」、「FWが下りてきて空いたスペースにMFが飛び出す」という類の連動した攻めはありません。

そして、それが結果的にゴールの少なさに繋がっていた印象です。

ただ、ここで勘違いしてはならないのは、「個々でどうにかしてしまうレベル」の選手が揃っているので、もちろん「怖さ」は存在するという点です。マネはその代表格ですが、ニアングやサール、ポーランド戦では先発でなかったケイタも同様の力を持っています。

ですが、いずれの選手もどちらかと言えば「活かされる」タイプなので、コンビネーションでの崩しが発生しにくいチーム編成ではあります。

――先程指摘した「遅攻時におけるイマジネーションの欠如」については?

これは前述した問題と共通する部分もあるのですが、ここでも「グループ戦術の不足」が響いています。

遅攻時というのは、基本的に相手チームが守備ブロックを敷いた状態での攻略となるので、そこでは工夫が要ります。

シチュエーションによってその工夫の仕方はバラバラですが、いずれにせよ言えることは、「一人の力でどうにかする」という考えだけでは限界が訪れるケースがほとんどということです。

そこで、どこのチームも「誰かが守備ブロックの間に顔を出す」、「そのパスコースにボールを出す」、「ブロックがずれたところにまた誰かが顔を出す」ということを繰り返したりするのですが、セネガルにはそういう発想が見られません。

ポーランド戦では比較的攻められていましたが、その理由は、ポーランドが引く位置からボールを繋ぐチームであり、セネガルのカウンターとの相性が非常に良かったことが大きいでしょう。

実際、大会前に行われた格下ルクセンブルクとの試合では、終始自分たちがボールを持つ試合展開でしたが、スコアレスドローで終了。

また、その後に行われたクロアチアとの強化試合では、サールが一点を奪い1-2という試合結果でしたが、やはりここでも見せ場となったのはカウンターや個々のスピードを活かした単調な攻めでした。

――日本から見ての「対セネガル」という観点でも、この問題点がキーになりそうですか?

日本が「セネガルが嫌がる展開に能動的に持っていく」という戦術を取るのであれば、間違いなく重要になる部分だと思います。

逆に自分たちがボールを大事にして、パスワークと連携で崩すことに傾倒してしまうと、セネガルの餌食になる可能性は高まるでしょう。

極端な話かもしれませんが、「好ましくない位置でボールを奪われるぐらいなら相手にボールを渡しても構わない」と思い切ったほうが賢明だと思います。

具体的な戦術的な観点で言うならば、セネガルのストロングポイントである両サイドに蓋をして、日本が敷く守備ブロックより前でボールを回させる展開に持ち込むイメージです。

例えば、ガーナ戦で試した3バックをここで用い、ウィングバックに「蓋」の役を任せるのも効果的だと考えています。サイドにおける質的な面での弱さを、位置的ないしは数的な優位性でカバーできるようになりますしね。

もちろん、アタッキングサードで前を向かせるケースを作らせないこと、サイドを簡単に破らせないことは前提にはなります。

ですが、この戦術に徹底したほうが、闇雲に攻め入ってカウンターを受けるよりも安全ではないかと見ています。

――それは、今大会でイランなどが見せた「完全リトリート」に近い形でしょうか?

スペイン戦におけるイランは極端過ぎましたし、あそこまで後ろが重たくなる状況はよろしくないです。

イランもあの戦術を選択したことにより苦戦していましたが、ボールを奪った後がしんどくなります。

日本もロングカウンターからゴールまで運ぶ力に優れていると思えないので、あくまでも「サイドに蓋をする」というイメージを持つだけであり、ペナルティエリア付近に「ベタ引き」する状況は避けるべきです。

それに、セネガルは、ボランチ(グエイ、アルフレッド・エンディアイ)に気の利いたパスが出せる選手がいないですし、ボールを受ける位置も的確ではありません。クリバリ、サネからの縦パスがずれることも度々あります。ボランチにアンカーを置くシステムもありますが、それを採用しても同様です。

そのため、日本としては、ただ下がるのではなく、この弱点を突ける体制を取ることも重要になります。

「サイドに蓋をしてボールをボランチまで下げさせ、そこで囲い込んで取る」というイメージでしょうか。

実際、ポーランド戦でもレヴァンドフスキがセネガルのアルフレッド・エンディアイのコントロールミスを突き、そのままボールを奪い攻め上がるシーンがありました。

――続いてセネガルの守備についてはどうでしょう?各メディアが「堅い」と口を揃えていますが。

「堅い」という表現が、守備のどの部分を指しているかにもよりますが、個人的には「堅い」という印象はないですね。

もちろん、ルーズボールを拾う強さ、タックルで確実に相手を仕留めるパワーなど、長所であるフィジカルコンタクトを武器にした守備は手ごわいです。その良さが一番活きているのが「ボランチのエリアに相手選手を引き込んでのゾーンプレス」ですね。

単体でもボールホルダーに圧をかけられる面子が「ここぞ」と見るや、複数でボールを取りに来るわけですから、想像するだけで恐ろしい…。

アリウ・シセ監督の下、「ボールホルダーに対して集団で潰す」という意識が各所で統一されている印象で、センターバックとボランチで挟む、ボランチとサイドで挟む、ボランチ同士で挟むという複数での守備は精度を増しました。

中央のエリアでボールを奪い、相手の守備ブロックが出来上がる前に、素早くサイドに人を走らせてパスを送る。周辺の選手もトップスピードで最前線に駆け上がり、一気にゴールまで持っていくスタイル。いわゆる「ショートカウンター」です。

そのため、日本から見ると、例えば、ハーフウェイライン付近(ミドルサード)でボランチが意図もなくパスを回すようなシーンは回避する必要があります。センターバックからの縦パスも同様に危険です。

繰り返しになりますが、「無理に繋ぐくらいなら思い切って相手サイドバックの周辺に放り込む」に徹底するほうが良いのではないかと見ています。

――この長所を逆手に取るというのは?

その考えは面白いですし、チームによってはそのような準備をしてセネガル挑むところはあるでしょう。

セネガルがボールを奪いにきやすいエリア(ボランチの前、サイドバックの前など)にあえて入り、彼らが食いついたところで空いたスペースに展開する方法ですね。

彼らは奪いに来るときは一気に前に出てくるので、その分、全体的にポジショニングがチグハグになりやすい。つまり、狙ってできるのであれば、「カウンター返し」のような格好になりますし、非常に効果的です。その上、セネガルはMFとDFラインの間にもスペースが空きやすいので、この隙をついてバイタルエリアを攻略するプランもありでしょう。

ただ、今の日本代表を見た時に、このような策を敷き、それを実施するようなイメージが湧かない。それよりも、意図のない横パスや可能性の低い縦パスをかっさらわれるマイナスイメージのほうが湧きやすい…という感想です。

――そこで余計ことは考えずに「相手サイドバックのところを攻める」ということでしょうか?

そうですね。日本のサイドの選手が、セネガルのサイドバックの裏を狙う、それが無理ならば大外に張ってボールを受けるイメージです。

セネガルの守備は基本的に中央を固めてブロックを敷くため、サイドバックの横のエリア(ペナルティエリアの両脇)が比較的空きやすいのも特徴です。

また、セネガルのサイドで起用されるプレーヤーは決して守備力が高くないですから、ちょっとした工夫でここから崩すことは可能だと見ています。

実は、意外と背後に出たボールに対して脆いです。

DFラインの裏を取られてのプルバック(マイナス気味のクロスボール)に対しては、中のポジションがずれやすく、マークもはがし気味です。さらに、両センターバックを越えるボール、ファーサイドに放り込まれるロングボールに対してはボールウォッチャーになりやすく、ポーランドもシンプルにサイドにボールを送る展開からチャンスを作っていました

ポーランド唯一のゴールも、ファーサイドへのロングボールをヘディングで入れたものでしたが、それも偶然ではないでしょう。

――以上を踏まえると、日本にも勝機はあると?

もちろんです。

日本との相性を考えても、このグループリーグで言えば、セネガルが最も手強い相手のように感じるでしょう。

ですが、苦手なシチュエーションが明確なチームですから、そこに徹したゲームモデル(プラン)を企てればいいわけです。

日本にとって「良いゲーム運びができている」とすれば、それはセネガルが攻めあぐねている展開ですね。

ただ、逆に言えば、正攻法で彼らと対峙することは非常に危険で、そのような状況に陥ることだけは避けて欲しいと切に願います。

コロンビア戦では良くも悪くもゲームプランが狂ってしまったでしょうから、西野監督が相手の長所を消して短所を突くことに重視する指揮官なのか、この試合でそういう面も明らかになるかもしれませんね。


さて、今回の「決戦前の最終分析!日本がセネガルに勝利するために覚えておくべき7項目」」はいかがだっただろうか。

少々、取り上げる項目が増えてしまったが、カレン氏の話を要約すると、セネガル戦における注意点と攻めるべきポイントは以下の通りだ。

①カウンターの場面以外では組織的な攻撃がない
⇒セネガル側にあえてボールを持たせる展開に持ち込む考えも有効

②スピード感が溢れるサイドからの局面打開は危険
⇒サイドで自由を与えず、スペースに蓋をする(3バックにしてウィングバックで対応するのも吉)

③ボランチを中心にしたパスワークに課題あり
⇒状況に応じて、プレスエリアを上げて「ボールの取り所」にしていく

③マネ以外にも「自力で何とかしてしまう選手」が多数存在
⇒遅かれ早かれ手痛い目にあうので、自陣深くに引きこもる守りは避ける

④組織的なプレス(特に中央エリア)は要警戒
⇒日本はボランチのところで無駄にボールをもたない、リスキーな縦パスも最小限に

⑤サイドバック周辺に比較的スペースが出来やすい
⇒日本のサイドの選手が大外に開き、攻撃の起点に。もしくはサイドバックの背後を狙う

⑥ファーサイドへのクロスボールについての対応に問題
⇒シンプルなクロスボールは基本的にファーサイドへ送り込むようにする

⑦「プルバック」への応対が苦手
⇒サイドバックの裏を取り、そこからの「プルバック」(マイナス気味のクロス)を狙う

セネガルとの試合を前に頭の片隅に置いて、応援してみても面白いかもしれない。

「雌雄を決する一戦」は、24日24時(25日0時)に火ぶたが切られる。

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