【事業所移転など積極投資・玉造の狙いと展望】〈棚橋浩司社長に聞く〉ニーズ把握、顧客満足度向上 システム更新で業務改革も

 厚板溶断加工大手の玉造(本社・大阪市北区、社長・棚橋浩司氏)は、老朽化対策としての事業所移転など積極的に設備投資を進めるだけでなく、システム更新に伴う業務の見直しなど抜本的な改革にも取り組んでいる。こうした取り組みや今後の展望などについて、棚橋社長に話を聞いた。(宇尾野 宏之)

――足元の状況は?

 「月産量は1万トン前後で推移しており、前年同期と比較しても大きな増減はない。営業努力を重ね、1万トンをなんとか維持している、というのが現状だ」

玉造・棚橋社長

――福山事業所(広島県)を移転し、レーザ加工専用の新浜工場、ガス溶断専用の箕沖工場を稼働しました。

 「今月末には移転作業が一段落する。試運転を重ね、速やかに軌道に乗せたい。老朽化対策が最大の目的であるが、敷地が拡大し在庫を拡充できるようになった。SS材だけでなく、建設向けでSM・SN材など多種多様に在庫できる。また、長尺材にも対応できるようになったので、これまで以上に建設分野の仕事を受注しやすくなった。開先・穴あけ加工機などの増設も今後検討していきたいが、まずは現有設備をフル稼働させるべく受注拡大に努めたい」

――名古屋事業所の事務所棟も更新します。

 「同事業所玉川工場には工場棟が2棟あり、1棟を撤去し、そこに新事務所を建設する。同工場棟にはファイバーレーザ加工機およびプレス機がそれぞれ1基あるが、これも撤去する。当地区には玉川工場のほか、弥冨流通加工センターもあり、生産効率を最大限引き上げることで、今後の需要増に自社で対応していきたい。来年春ごろには新事務所が完成する予定だ」

 「当初は拡張移転による工場集約も考えたが、お客様各工場の郊外への移転が進み、広範囲に点在するようになった。そのため、集約化のメリットは薄いと考えた。東海地区は産機を中心とした製造業向けで安定した需要が見込める地域。遠方であっても、きめ細かく対応できるよう、営業拠点の拡充を検討していきたい」

――今年5月には京滋営業所を開設した。

 「既存のお客様の近くで、品質・納期など、よりニーズに合った丁寧な営業対応をすることが狙い。その他地域においても営業所の開設を考えていきたい」

――他工場における投資は?

 「自社で設備増設するか、もしくは外注パートナーとの連携を強化することで、開先や穴あけなど二次加工にも対応したい。例えば、館林工場(群馬県邑楽郡)について、関東では溶断から二次加工まで一貫生産で対応するケースが多い。同工場は溶断加工しかできないので、二次加工設備の増設も考えていきたい」

――このほかの投資は検討していますか?

 「基幹システムの更新が必要で、今年度からプロジェクトチームを立ち上げた。業務を洗い出し、要件整理を始めている。既存システムにも製販連携の要素は含まれているが、これをより洗練し、製販の一体化『工程の見える化』を一層推進したい。また、配車支援など、これまでになかった要素も組み込み、残業の削減や納期対応力の強化などを実現したい。2020年春ごろをめどに新システムを稼働させる予定だ」

 「また、メタルワングループの工場を見学する機会が増えたが、当社もより安全な工場に変貌していく必要があると強く感じている。そのための手段の一つは、自動化だろう。例えば、パレットチェンジャーを有効活用するなど、各種業務をロボットに置き換えることができないか、検討していきたい」

――これからの玉造をどう考えますか。

 「今期の目標としているのが、顧客満足度の向上だ。お客様によってより高いレベルの表面の美麗さが求められ、穴あけの精度が重要であるなどニーズはさまざまだ。ニーズをつかみ、よりお客様が使いやすい加工品を目指していく。また、納期対応も単に速いだけではなく、よりお客様の都合に合った時間に出荷できるようにする。それにはきめ細やかな営業が必要になる。システム更新による事務作業の効率化や新規営業所の開設などで、営業がお客様と顔を合わせる機会を増やしていく。社員が安心して働ける職場を実現し、収益力も高めていきたい」

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