海自ヘリ離着陸場新設案が波紋 横須賀、寝耳に水の住民懸念

 海上自衛隊が2020年7月の運用開始を目指し、横須賀市船越地区で整備を進めている新庁舎(海上作戦センター)の敷地内に、ヘリコプターの場外離着陸場を新設する計画が突如、浮上している。防衛省は16年度から着工しているが、地域住民に場外離着陸場の設置を説明したのは今年3月。同省は「設置場所が確定していなかったため」と釈明しているが、地域住民らの間に同省への不信や安全性への懸念が広がっている。

 センターは地上6階、地下2階建てで、延べ床面積は約3万6千平方メートル。自衛艦隊、護衛艦隊、潜水艦隊などの各司令部を移転し、集約。全国の部隊を指揮する上級司令部としての任務を担う。また大規模災害発生などの緊急時に隊員を迅速に参集するため、隊員用宿舎3棟も建設する。

 センターの整備計画について、同省は着工前の15年度から、船越地区の住民らを対象に、定期的に説明会を開催してきた。

 一方で、市に対する同省や海自の説明によると、新たに浮上した場外離着陸場は新庁舎前に整備。広さは約1300平方メートルで、「緊急時に人員や物品を輸送する」ために使い、離着陸訓練も行うとしている。使用は月平均3・6回ほどで、騒音は地下鉄の車内と同じ程度の78デシベル。住宅地や学校の上を飛行することはないという。

 市によると、同省が場外離着陸場の新設について市に説明したのは昨年7月。その後、同地区の町内会長を集めて説明し、地域住民には今年3月の説明会で明らかにした。説明が遅れた理由について、同省は市に対し、「場外離着陸場の設置場所が確定していなかったため」としている。

 これに対し、地元の船越連合町内会は今月7日、市を通じ、同省南関東防衛局に要望書を提出した。その中で▽騒音など周辺環境への影響を確認するため、飛来試験を実施する▽詳細な飛行ルートを提示する▽説明が遅くなった理由を明らかにする-ことなどを求めている。同町内会の会長(78)は「官舎ができるという話しか聞いていなかった。なぜ最初から説明しなかったのか。近隣住民が安心できるようにしてほしい」と訴える。

 市議会6月定例議会でも、この問題が取り上げられた。一般質問に立った根岸加寿子氏(共産)は、センターの周囲には市立田浦中学校や住宅街があることを指摘。上地克明市長は「地元住民への最大限の配慮と、安全性の確保を防衛省に強く求めた」と答弁。また市側は「海自には輸送機オスプレイは配備されておらず、現在のヘリコプターと同等のものを想定し、騒音対策について(同省に)確認している」とした。

2020年7月の運用開始を目指し、整備が進む新庁舎周辺=横須賀市船越地区

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