【横浜市大病院医療事故】引き継ぎ不徹底、がん見落とす

 横浜市立大学付属病院(同市金沢区)で、がんの疑いが指摘されていたにもかかわらず、情報共有不足が原因で患者が死亡する医療事故が発覚した。病院側は緊急性の高い疾患やがんなどが認められた場合、担当医への電話連絡を徹底するなどの再発防止策を掲げるが、失った信頼を回復するには病院一丸となった取り組みが欠かせない。

 同病院によると、亡くなった60代男性の2012年10月のコンピューター断層撮影(CT)検査は、心臓の治療を目的に実施された。放射線科技師は、心臓が撮影された部分の画像のみを循環器内科の担当医に提供。一方で、放射線科医師がこの画像に写った腎臓に陰影を発見し、「がんの疑いを排除することが望まれる」との内容の画像診断報告書を作成した。しかし、循環器内科の担当医が報告書の存在に気付かず、結果的にがんが見落とされた。

 同病院では17年8月、がんなどの疑いが認められた場合、放射線科医ら画像検査に関わった職員が、検査を依頼した医師に直接電話連絡をするとの基準を徹底した。それまでは慣例的に行われていただけで、不在時の引き継ぎなどが十分に徹底されていなかった。当時の放射線科医、担当医とも退職しており、実際に電話連絡を行ったかどうか、記憶していないと話しているという。

 25日の会見で同病院は再発防止策として、医師間の電話連絡の徹底のほか、電子カルテに未確認の画像診断報告書がある場合、注意を喚起するなどのシステム改修を挙げた。医師が確認した時点で「既読」とする機能も追加するという。

 また会見では、この男性のほかに悪性腫瘍が見落とされていた事案が、横浜市大付属市民総合医療センター(同市南区)も含め10件あったことが判明した。うち2件は手術で腫瘍を取り除いたが、より早い段階で所見に気付いていれば内視鏡手術など他の対応も考えられたとしている。年齢を理由に治療を終えた90代の女性を除く9人は現在、治療中もしくは経過観察中といい、外部委員が入った病院の医療事故調査委員会で調査している。

医療事故を謝罪する横浜市立大学付属2病院の関係者ら=横浜市役所

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