金属行人(6月26日付)

 「この業界は成熟していない。だから今後レベルが上がっていく余地があるとも言える。小売りや建設など他業界に比べ産業の成熟度合いが、ひと声50年遅れている」。先日出席した鉄リサイクル工業会全国大会の講演者と話をしていたら、そうした厳しい指摘があった▼その理由は「小規模企業の集まりであり、業界を引っ張る大規模企業が存在しないことが大きい」。同業他社との競合が激しく、人手も不足。企業の社会的責任が増大する中で経営内部コストが高まっているが、それに対応できる企業の構えになっていないとの指摘もある▼業界固有な事情ばかりとは言えないだろう。欧米では既に再編統合が進み、年商1千億円を超える企業が両地域ともすでに数十社ある。中には売上高2兆円に達するところも▼鉄リサイクルだけにとらわれず、総合リサイクル業、静脈産業型企業として、わが国における循環型社会構築の担い手になるべき存在だ▼事業環境は激変し、法制度も変わる。中国など諸外国の影響も受ける。各企業で世代交代が進む中で、着実に業界は成熟し始めている。業界の認知度を上げ、リサイクルしたものを動脈産業につなぎ、日本製造業の一翼になると胸を張れる日はいつだろうか。

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