F1 Topic:わずか3コーナーで母国レースを終えたガスリー、腐ることなく週末の課題をチームと共有

 フランスGPのレース後、午後6時30分に予定されていたピエール・ガスリーの記者会見は延期された。スタート直後の事故に関して、レース審議委員会から呼び出されていたからだ。 

 ガスリーの会見が始まったのは、午後8時前のこと。約1時間半遅れで始まった会見だが、飛行機のフライトの時刻が迫っていたガスリーは大きなカバンを手に、帰り支度を済ませてやってきて、「5分間だけにしてほしい」(チーム広報)という状況で始まった。

――スタート直後に何が起きたのか教えてほしい。
「前方で接触があったみたいで、1コーナーと2コーナーが大混乱だった。そのため、多くのマシンがコース外に逃げていた。僕はコース上にとどまって、3コーナーに向かっていた。すると前方にエステバン(・オコン)のマシンが見えた。彼のマシンはダメージがあったみたいで路面から火花が散っていた。彼のマシンはコースのアウト側の左側を走っていて、インサイド(右側)が空いていたから、迷うことなくインに飛び込んだ」

「すると突然、エステバンがコーナーのエイペックスに向かって、アウト側からイン側にマシンを寄せてきた。僕は接触を避けようと、できる限りのブレーキングをしたけれど、そこにはスペースがまったく残っていなかった。もう僕にはどうすることもできなかった。おそらく、彼は僕のことを見ていなかったんだと思う。たったコーナー3つで、母国グランプリが終了するなんて、最悪の気分。しかも事故を起こしたのがフランス人ドライバー同士なんて、なんといって言いのか……」

 そのあと、筆者は「なぜ、1時間半もレース審議委員会から帰ってこなかったのか?」と尋ねると、ガスリーはこう答えた。

「レース審議委員会に行った後、エンジニアたちとミーティングを行っていたんだ」

 スタート直後の3コーナーでリタイアしたガスリー。いったいどんなミーティングを行っていたのか? 田辺豊治ホンダF1テクニカルディレクターに聞いた。

「(ブレンドン・)ハートレーのほうは完走しているので、スタートから第1スティント、第2スティントの走りを振り返り、良かった点や課題を洗い出します。ガスリーはスタート直後にリタイアしてしまいましたが、フォーメーションラップは走っているし、レースもスタートは切っているので、その部分をレビューし、そしてアクシデントで何があったのかを話していました」

 ただし、ガスリーがエンジニアに語っていたのは、それだけではない。

「日曜日のレース後のミーティング(話し合い)は、レースのデブリーフィング(事後報告)だけでなく、週末を通しての課題はなんだったのかをチーム、パワーユニット、ドライバーで共有する時間にもなっています。だから、1周目でリタイアしたガスリーも、今週末感じていた課題をエンジニアに指摘していました」

ピエール・ガスリーの記者会見はきっちり5分で終了

 会見はきっちり5分で終了。そして、サーキットを後にした。会見の席で事故の不満を言うことより、次のレースに向けて、できるだけ長い時間をエンジニアとのミーティングに充てていたわけである。その姿勢が次に生かされることを願いたい。

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