JST、シリコンインゴット中の結晶欠陥可視化に成功 太陽電池高品質化に貢献

 科学技術振興機構(JST)は26日、名古屋大学の研究グループが、多数の太陽電池用シリコンウエハーの蛍光画像を収集し、得られた多数の情報処理技術を適用することで太陽電池用シリコンインゴット中の結晶欠陥の3次元分布を可視化することに成功したと発表した。太陽電池の高性能化には主原料である多結晶シリコンの結晶欠陥が多いことが課題だったが、結晶欠陥の3次元可視化により、欠陥発生のメカニズムが解明され、シリコンインゴットの高品質化につながる技術として期待されている。

 多結晶シリコンは、製造コストの低さがメリットだが、インゴットの製造時に結晶欠陥が多く発生するという課題があり、その結晶欠陥がどのように分布しているかを調べる方法が従来はなかった。これに対し同研究グループは、シリコンインゴットをスライスして作製した大量の実用サイズの多結晶シリコンウエハーに、レーザー光を照射し、蛍光と反射光が混ざった画像をCCDカメラで撮影。得られた多数の画像に対して情報処理技術を適用し、ウエハー表面のスライス痕やノイズを除去し、結晶欠陥を蛍光強度の低い領域として抽出した。さらに大量の2次元画像を3次元に再構成し、インゴット中で結晶欠陥が発生したり消滅したりする様子を3次元的に示した。

 今後は機械学習も活用して結晶欠陥の発生点の特徴を明確にし、インゴット製造条件の情報を連携させて解析することで結晶欠陥の発生・消滅メカニズムを進めるとしている。また、民間企業との共同研究により、太陽電池用高品質シリコンインゴットの新規製造技術の開発を実施することも計画している。

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