清水建設が杭先端部品質の化学的判定技術を開発 アルカリと酸の中和反応を利用

 清水建設はこのほど、既製コンクリート杭の杭先端部と支持層を一体化するソイルセメントの強度を化学的手法で判定する技術「CW―QUIC」を開発・実用化した。セメント含有量をアルカリと酸の中和反応を利用して判定することが特徴で、所要時間は1時間程度、費用も従来の圧縮試験と変わらない。今後、既製杭を採用する全現場に展開していく方針で、2年後をめどに杭の試験業者などに対してライセンス供与(実施許諾)していく。

 ソイルセメントの強度はコンクリートと同じようにセメントと水の混合比率と最も相関が高くセメントはアルカリ性となっている。このため、本技術ではセメント含有量をアルカリ性と酸の中和反応を利用して判定する。開発に際してはソイルセメントの強度とセメント水比の関係を数式化するとともに必要な強度を発現させることのできるソイルセメント中のセメント量をアルカリと酸の中和反応により求めることのできる換算表を作成した。

 判定作業は最初に採取した未固結状態のソイルセメント約10ccを乾燥式水分計に投入。乾燥前後の重量を比較して水分量を求める。次に換算表上で求めた水分量と必要強度を結ぶ交点に記されている酸の量を確認し、最後に100ccのプラスチック容器中に所定量の酸、アルカリ・酸濃度を色表示する指示薬を約1グラム、乾燥したソイルセメント1グラムを入れて全体の重量が100グラムになるよう水を加える。セメントを溶出させるために10分間隔で容器を振り混ぜ、30分程度経過時の溶液の色調で判断する。当初の酸性を示すグレーからアルカリ性を示すピンクに変色すると十分なセメントが含有されており、必要な強度を有すると判定することができる。

 既製杭の施工は杭孔の掘削や杭先端部を支持層に固定するためのセメントミルクの注入、杭の挿入という流れとなる。日本建設業連合会の既製杭施工管理指針ではセメントミルクと泥水を攪拌(かくはん)して構築する根固め部と呼ばれるソイルセメントの強度確認が推奨事項となっている。このため、現状では現場での試験施工時に未固結のソイルセメントを採取して圧縮試験用のテストピースを製作。3~7日で圧縮試験を行い所定の強度が発言していることを確認した後で本杭を施工する。同社では既製杭の採用現場が毎年100件程度あり、現場で即座に強度確認できる検査手法の確立が求められていた。

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