チャンスを作ったのは敗退決定のコスタリカ
開始直後からチャンスを作ったのは、2連敗ですでにグループリーグ敗退が決まっていたコスタリカだった。6分、今大会初スタメンのキャンベルが左足で強烈なミドルを放てば、直後には左サイドからのクロスにフリーのボルヘスが頭で合わせる。いずれもスイスの守護神ゾマーの好セーブに弾き出されたものの、運動量のあるオビエドとガンボアの両ウイングバックを高い位置に配し、前から圧力をかけるコスタリカが優勢に試合を進める。
引き分けでもベスト16に勝ち上がれるスイスだったが、この日は中盤でミスが目立った。相棒のベーラミが守備の局面で最終ラインにまで下がってしまうため、頻繁に1ボランチの格好になったジャカが、相手のプレッシャーをまともに受けてボールロストを重ねた。
10分にも中盤でボールを奪われると、そこからコリンドレスにクロスバー直撃のシュートを浴び、冷や汗をかかされている。ただ、そんな状況でも、スイスがワンチャンスをモノにして先制に成功する。
31分だった。シャキリを起点に右サイドを崩すと、リヒトシュタイナーが送った正確なクロスをエンボロが頭で折り返し、これをジェマイリが力強く叩き込んだ。今大会初めて先制したスイスは、こうなると無理をしない。逆に立ち上がりの良い流れを生かせなかったコスタリカは、大会無得点のまま祖国に帰るわけにはいかないと、後半に入ってさらにギアを上げていく。
スイスは勝ち越すも、終了間際に再び冷や汗
強い想いがゴールに繋がったのは、56分。右CKからCBのワストンが打点の高いヘッドでゾマーの牙城を破ったのだ。60分に攻守のバランスを整えるべくベーラミに代えてザカリアを、69分になかなか決定機に絡めなかったCFガブラノビッチに代えて同じポジションのドルミッチを投入。先に動いたスイスだったが、79分にコスタリカの鋭いカウンターを浴びてフィニッシュにまで持ち込まれると、直後には崩しの核であるシャキリも下げて、よりディフェンシブな戦いにシフトする。
88分、ザカリアの右からのクロスをドルミッチが決めて、2-1。引き分けでも良しとしながら、手数をかけない攻撃で、それも途中投入の2人が絡んで追加点を奪う。スイスにとっては理想的な展開だっただろう。
しかし、それでも最後までゴールを目指し続けたこの日のコスタリカの執念は、称賛に値した。アディショナルタイムには、卓越したスピードとキープ力でスイスDFを再三苦しめていたキャンベルが、ドリブルでエリア内に侵入。ザカリアのファウルを誘ってPKを獲得する。これを、直前のPK判定をVARによって取り消されていたB・ルイスが、クロスバーとGKゾマーの頭に当てながらも決めて、土壇場でコスタリカが追いつく。
大旋風を巻き起こした4年前の再現とはいかなかったが、最後の最後に意地を見せたコスタリカ。チームの誇り高き戦いぶりに目元を潤ませていたラミレス監督をはじめ、彼らが満足げな表情で試合を終えたのとは対照的に、存分に苦しめられた末のドローでグループ2位通過を決めたスイスの面々に、笑顔はなかった。
想像以上の苦戦を強いられた代償として、通算2枚目のイエローカードを受けたリヒトシュタイナーとシェアは、決勝トーナメント1回戦に出場できない。最終ラインの主力2枚を欠くのは、間違いなく痛手だ。スウェーデンとの決戦に向けて、ペトコビッチ監督のマネジメント能力が問われる。
[スコア]
スイス代表 2-2 コスタリカ代表
[得点者]
スイス代表:ジェマイリ(31)、ドルミッチ(88)
コスタリカ代表:ワストン(56)、OG(90+3)
文/遠藤 孝輔
theWORLD212号 2018年6月28日配信の記事より転載