硬式転向4年目で侍J女子代表入り 技巧派右腕に指揮官期待「秘密兵器になる」

初の代表入りとなった谷山莉奈【写真:石川加奈子】

初代表入りの谷山莉奈、昨季は女子プロ野球で最高防御率

「第8回WBSC女子野球ワールドカップ」(8月22~31日、米国フロリダ)で6連覇を目指す侍ジャパン女子代表の強化合宿が29日、新潟県新潟市のHARD OFF ECOスタジアム新潟で始まった。

 代表選手20人の発表後初めての合宿。目を引いたのは、初めて代表入りした谷山莉奈投手(埼玉アストライア)だ。走者を置く特別ルールで行われた開志学園高との練習試合では7回に登板。無死一塁から狙い通りに打者3人を内野ゴロに打ち取った。

 直球の球速は115キロ前後ながら、カーブ、スライダー、シンカーを操り、抜群の制球力を誇る。プロ3年目の昨季、防御率1.59でタイトルを獲得して一躍脚光を浴びた。今季も防御率は2.01で、里綾実投手(愛知ディオーネ)らを抑えてトップに立っている。

「コントロールがめちゃめちゃいいし、ボールのキレが素晴らしい」と高く評価する橘田恵監督は、14年、16年大会でMVPを獲得した里とともに、投手陣の柱として考えている。さらに、国際大会が経験ないことが大きな強みになる。「海外の選手は知らない存在なのでダークホース。秘密兵器になる」と指揮官は期待している。

 硬式ボールを握って、まだ4年目という異色の右腕だ。春日部女子高時代はソフトボール選手、日体大時代は女子軟式野球部に所属していた。大学卒業後には海外青年協力隊を目指していたが、同期が女子プロ野球リーグの入団テストを受けると聞いて挑戦。見事合格した。

「1アウト取ってくれればいいから」少しずつ積み重ねた成功体験

 だが、入団当初は挫折ばかりだったという。「1年目は本当に辛かったです。周りのピッチャーを見てびっくりしました。すごいピッチャーばかりで。自分に自信がなかったし、速い球を投げたいと自分を見失っていました」。  

 当時の新原千恵監督と朝井秀樹コーチから指導を受け、できないことに取り組み、少しずつ成長した。最初はワンポイントからのスタート。朝井コーチからは「1アウト取ってくれればいいから、そのことだけに集中して」と言われた。「そうやって役割を与えてくれて、少しずつ自信をつけさせてくれました。あの1年がなかったら今はない」と谷山は感謝する。

 1年目、2年目と最多ホールドのタイトルを獲得して、昨季満を持して先発に転向、最高の結果を出した。プロでは今季も先発だが、代表では先発にこだわるつもりはない。「先発と中継ぎ、どちらでもいけるようにしたいと思っています」。終盤の走者を背負った場面で修羅場をくぐりぬけてきた中継ぎ経験を代表で生かす。

 初めての国際大会を楽しみにしている。「プロでは、いつも対戦している相手でデータがわかっていて戦う。でも、今回は一発本番で知らない相手。どう戦うのか、いい経験になります」と目を輝かせる。

 6連覇へのプレッシャーがないわけではない。「今までの先輩たちがつくった歴史。伸ばすように貢献したいですし、その一員で戦えることはすごいこと。責任を感じますが、その中でも自分らしさを見失うことなく戦いたいです」。努力で課題を克服し、小さな成功体験を積み重ねてたどり着いた日本代表。そのユニホームの重みを噛みしめながら、勝利のために全力を尽くす。

(Full-Count編集部)

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