MLB通ドラマー、オカモト“MOBY”タクヤの記者体験リポート(Dバックス編その1)

Dバックス本拠地・チェイスフィールド【写真:オカモト“MOBY”タクヤ】

記者体験2日目はダイヤモンドバックス取材へ

 前半戦が佳境に差し掛かってきたメジャーリーグ。各地で熱戦が繰り広げられる一方で、日本人選手が次々と故障者リスト(DL)入りして、7月1日現在メジャー登録25人枠に入るのはドジャース前田健太投手、ダイヤモンドバックス平野佳寿投手、パドレス牧田和久投手のみとなった。そんな“異常事態”を迎える直前の6月1日から4日間、Full-Countでは特別リポーターに、ロックバンド「SCOOBIE DO」のドラマー兼マネージャー、オカモト“MOBY”タクヤ氏を迎えて現地取材を敢行した。

 今季からコラボするFMおだわらで放送中の野球と音楽をつなげるラジオ「NO BASEBALL, NO LIFE.」でメインMCを務め、昨季は動画配信サービス「DAZN」のメジャー中継で解説を務めたメジャー通のオカモト氏。強行スケジュールで行われた記者体験リポート、第2回をお届けする。

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 MLB記者体験2日目の6月2日は午前8時にホテルを出発し、目の前に位置するオレンジカウンティのジョン・ウェイン空港へ。1時間ほどのフライトでアリゾナ州フェニックスに到着しました。気温は華氏100度=摂氏40度超え! 地元の方も「この時期はもちろん暑いんだけど、今年はどうかしてる」というくらいの暑さが続いているらしく、サングラスとミネラルウォーターは必需品です。同行(“引率”という言葉の方が相応しいかもしれません)していただいている記者さんから「MOBYさん、ホテルに入る前にキャンプ地巡りしましょう!」とのご提案。「もちろん行きます!」と2つ返事でレンタカーを走らせます。

 MLBのキャンプ地はフロリダ州とアリゾナ州に15チームずつ分かれていて、かつアリゾナ州にあるキャンプ地は州都フェニックス近郊に点在し、車があれば数か所を一気に巡ることができます。まずは空港から一番近い、フェニックスの隣町テンピにあるテンピディアブロスタジアムへ。ここがロサンゼルス・エンゼルスのキャンプ地です。本拠地エンゼルスタジアムの左中間には人工的に作られた岩山がありますが、ここには天然の岩山が隣接していたりして、どことなくアナハイムと雰囲気がリンクしています。

 そこから車をさらに走らせ20分、シカゴ・カブスのキャンプ地であるスローンパークへ。ここはカブスの本拠地リグレーフィールドの雰囲気がそこかしこに溢れていて、球場を囲む通りの名前もリグレーフィールド周辺を再現している徹底ぶり! キャンプの時期にはカブスファンが全米各地から訪れ、オープン戦も連日ソールドアウトとのこと。カブスファンの端くれとして、是非ともキャンプ期間中にまた訪れたいものです……。

 ここからさらに車を10分走らせ、今度はオークランド・アスレチックスのキャンプ地ホホカムパークに到着。非常に無駄のない感じ(つまり簡素)で、球団の柄がよく出ていました。

エンゼルスのキャンプ地・テンピディアブロスタジアム【写真:オカモト“MOBY”タクヤ】

ダイヤモンドバックス本拠地を訪問、グラウンドに降り立つと…

 1時間ほどのキャンプ地巡りを経てホテル到着。休憩を挟んで、15時にアリゾナ・ダイヤモンドバックスの本拠地、チェイスフィールドへ。プレスボックスに行くと、日本人記者の方が我々2人の他にお二方いらっしゃり、自己紹介しつつボクの経緯を話すとお二方とも非常に興味を持っていただきました。大谷翔平選手を取材するために日本から沢山の記者が取材に訪れている一方、アリゾナにも取材に来ていらっしゃる日本人記者の方々を目の当たりにし、現場で生の情報を仕入れて発信することがいかに大事なのか、そして価値があるのか、現地に来て理解することができました。ボクの仕事に置き換えてみると、その土地その土地に訪れてライブをする、ということと、大きな括りにおいては一緒なのかもしれませんね。

 さて、グラウンドに立ってみると、開閉式の屋根が随分と高く感じるからなのか、全体的にデカい! という第一印象。外の茹だるような暑さに比べて球場内は空調が効いていて、そして天然芝なので非常にいいとこ取りをした感じ、つまり快適! 

 フィールドを見渡すとブルペン陣が合同でアップしていて、その中に平野佳寿投手を発見。通訳のケルビン・コンドウさんとリラックスした感じでキャッチボールをしていました。15時半過ぎにクラブハウスへ移動し、アップを終えてロッカーの前でくつろいでいた平野佳寿投手にお願いし、早速取材スタート!

 6月1日の時点で11試合連続無失点と好投を続けていた要因を伺うと「特に好調だとも思ってないですね。日本にいる頃から、普段から自分が『今、自分は好調だ』と思ったことがないんです。自分の身体を毎日しっかり整え体調を維持し、それを持続させている感じです」とのこと。「オリックスでも自分のペースで調整をさせてもらえていたけれども、アメリカに来てからより一層、自分のペースで調整させてもらえていることが、自分自身にフィットしています」と語ってくれました。

 日本人投手がアメリカに来て悩むことの1つにボールの違いがありますが、本人は全く気にしてない様子。ダイヤモンドバックスは今年からフェニックスの乾燥する気候に対応すべく、試合球を事前に加湿器に入れて投手の手に馴染みやすくさせているそうです。でも、平野投手は「初めてなんでよく判らないんですよねー」と、これまた特に気にしていない様子。「オフの時間の過ごし方もほぼ日本と変わらず、電子版がアメリカでも購入できるのでマンガを買って読んでます」と話していました。

 ボールや環境の変化、そしてオンとオフなど、日本とアメリカでの違いをあまり気にせずマイペースを持続していることが、アメリカで功を奏しているのではないか、と取材をさせていただいて感じました。そしてこのまま好調を持続すれば見えてくるのが“ミッドサマー・クラシック”ことオールスター。平野投手にそのことを伺うと「いやぁ、全く気にしてないですね。そんな余裕はないんで……。1試合1試合、しっかり投げていくだけです!」と、どこまでもマイペース。その姿勢にボクは非常に好感を覚え、もっと応援したい!と思いました。

カブスのキャンプ地・スローンパーク【写真:オカモト“MOBY”タクヤ】

平野投手に直撃インタビュー、発見した共通点とは…

 さてさて、少々野球から話は逸れまして、5月17日、ダイヤモンドバックスが長期遠征に出掛ける際、選手やコーチ陣がアメリカの人気テレビコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」のキャラクターに扮して話題を呼びました。

 その際、平野投手が扮したのは「サムライ」。ただこれ、いわゆる日本人だからサムライという安直な理由ではなく、同番組に出演していた伝説的なコメディアン、ジョン・ベルーシが映画『用心棒』を参考にしてパロディにした当たり役だったんです。

 そのことを平野投手に伝えると「いやー、全然知りませんでした!」との反応。今回、ボクのこの仕事が決まった際、このことを平野投手に教えることができれば、と思っていたので、役目を果たした! セットアップ完了した!と思いましたよね。

 さらに音楽の話題になった際、平野投手は「ヒップホップが好きで、オリックス時代から使用してたKREVA feat. Mummy-D『中盤戦』を登板時に流してもらってるんです」と……。ち、近い!Mummy-Dさんの所属するRHYMESTERと、我々SCOOBIE DOは何度も共演した仲! そのことをMummy-Dさんに伝えます、と平野投手に約束してインタビューは終了。最後は何だか我田引水になってしまいましたが、素人同然であるボクの質問にも終始丁寧に受け答えしていただき、本当にありがとうございました!

 16時、再びグラウンドに移動。投手と内野手が守備練習を繰り返し行っていました。昨日のエンゼルスとレンジャースは守備練習をやっていなかっただけに、試合前の練習は球団によって千差万別、ということも分かりました。

 16時半、今度は対戦相手、マーリンズのクラブハウスへ移動。同行した記者の方がチェン・ウェイン投手に取材を試みたのでボクも一緒に。彼の駆使する日本語はネイティブとほぼ一緒で、20分たっぷり喋ってくれました。

 17時15分にはチームが入れ替わり、今度はマーリンズが練習開始。捕手陣がセカンドへのスローイング練習を入念に行ってました。観客席を見渡すと……おお、出足が非常にいい! それもそのはず、この日はダイヤモンドバックスの主砲、ポール・ゴールドシュミットが映画『スター・ウォーズ』のキャラクター、ハン・ソロに扮した“ポール・ソロ”ボブルヘッドが球場で配られる「スター・ウォーズ・ナイト」で、観客席にはコスプレした人たちも沢山いました。

 18時頃に一旦プレスボックスへ戻って食事休憩。昨日のエンゼルスタジアム同様、関係者用の食堂にてビュッフェ形式+サラダバーの食事が提供され、日本人記者の方々とご一緒させていただき情報交換。ここの食堂にはフェニックスから程近いアリゾナ州スコッツデールに本社があり、日本でも人気の「コールドストーンクリーマリー」のアイスクリームがあり、思わず手が伸びてしまいましたよね。

アスレチックスのキャンプ地・ホホカムパーク【写真:オカモト“MOBY”タクヤ】

メジャー初の回またぎ登板も動じぬ平野投手に感心

 19時10分、プレーボール。本日の主役ともいえる主砲ゴールドシュミットが初回にソロホームランを放ち先制……まさに“ポール・ソロ”! その勢いに乗ったダイヤモンドバックスは小刻みに点を重ねます。先発エースのザック・グリンキーは6回2/3を7安打1失点6奪三振に抑える好投。そのグリンキーの後を任されたのは……ヨシ・ヒラノ! チェイスフィールドに爆音で流れる『中盤戦』を一身に浴びながら颯爽と登場です。

 7回2死一、二塁とピンチを背負いながらの登板となりましたが、マーリンズの1番打者で、私MOBY的には元シカゴ・カブスの選手として気が置けない内野手スターリン・カストロをショートゴロに仕留める見事なピッチング! 平野投手はアメリカに来てから初めてのイニングまたぎとなる8回にも登板。先頭打者のJ.T.リアルミュートにファウルで粘られた後の8球目をしぶとくレフト前に運ばれ、ここでお役ご免。その後を”ザ・シェリフ(=保安官)”ことアンドリュー・チャフィンがキッチリ抑え、平野投手はこれで12試合連続無失点を記録。結局、試合はダイヤモンドバックスが6-1とマーリンズに快勝しました。

 試合終了後はダイヤモンドバックスのトーリ・ロブロ監督の合同記者会見へ。「ザック(・グリンキー)は素晴らしいピッチングだった」「そして今日は良いいタイミングでクラッチヒットが出た。まずは初回、ポール(・ゴールドシュミット)のソロ……」と話したところで、場内からクスクス笑い。ポール・ソロが実現しちゃいましたから(笑)。

 監督はさらに「最近は選手各自がやるべきことに向けて準備し、実行することができている」と称賛。5月20日以来となる地区首位に立ったことに関しては「確かにそうなんだけど、選手たちはそのことに関しては特に気にしてない」と述べました。

 終了後はクラブハウスへ戻り、ゴールドシュミットやグリンキーの囲み取材などがありつつ、平野投手の囲み取材もスタート。アメリカでは初のイニングまたぎになったことには「日本でも経験があるので特には気にならなかった。ランナーを残して降板してしまったのは残念だけど、その前に自分はキッチリ抑えたのと、自分の後もみんなが抑えてくれて勝ったので良かったです」と、どんな形であれチームが勝ったことを最優先させていました。そして「チームの方針や指示に従って投げているだけ。登板間隔やタイミングは全てチームに任せている」「初対戦のバッターが続くので、シーズン開始から2か月経っても常に新鮮な感じで投げている」「自分が成長しているかどうかを判断するのはシーズンが終わってから。今は次の試合に勝つことのみしか考えてない」とも語ってくれました。

 22時半に一段落したものの、記者の皆さんはここから記事を書いたり、まだ試合中だったエンゼルス大谷選手の結果を注視するとのこと。頭が上がりません……。結局チェイスフィールドを出てホテルに戻ったのは24時。アリゾナの地ビールを浴びるように飲んだ後、ボクは何時の間にか床に伏せていました……。

●プロフィール
オカモト“MOBY”タクヤ(SCOOBIE DO)
“LIVE CHAMP”の異名を持つロックバンド、SCOOBIE DOのドラマー兼マネージャー。ドラマーとして様々なアーティストのレコーディングに参加。また動画配信サービス「DAZN」でのMLB解説を始め、野球と音楽がテーマのラジオ番組・FMおだわら「NO BASEBALL, NO LIFE.」ではMCを担当。DJ、MLB関連のコラム、酒場コラムやラーメンコラムの執筆、クイズ作家、香港政府観光局公認「超級香港迷(=スーパー香港マニア)」。

(Full-Count編集部)

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