GL無失点のウルグアイ この日もリトリートが奏功
キャプテンのゴディンを中心とした堅守で、グループリーグを無失点で切り抜けたウルグアイ。対するポルトガルは大会前から守備に不安を抱え、ここまでの3試合で4失点を喫した。ただ、欧州王者には点を獲られても取り返す力が備わっている。なによりロナウドの存在だ。今大会で4得点を挙げているスーパーエースが違いを作り出せれば、ウルグアイの鉄壁の守備を崩せる可能性はある。
ただ、先に輝きを放ったのはウルグアイが誇る世界屈指の2トップの方だ。敵陣で右サイドに流れたカバーニが、逆サイドのスアレスに精緻なロングパスを通す。そのボールを完璧にコントロールしたスアレスが、シュート性のクロスを送ると、ゴール前に飛び込んだカバーニがねじ込み、ウルグアイに先制点をもたらしたのだ。一連のプレイ全てが正確無比で、そのスピード感も圧巻。ペペ、フォンテとの空中戦を避けるべく、ファーサイドでボールに合わせたカバーニの判断も素晴らしかった。
堅守速攻を持ち味とするウルグアイとしては理想的な展開だ。あえて相手にボールを委ねて、自陣の深い位置にブロックを築くリトリートで、ポルトガルの攻撃を跳ね返していく。左サイドに流れがちだったロナウドには、つねに2枚以上で対応。フォンテにヘディングシュートを許した14分のシーンなど、セットプレイ絡みでヒヤリとする場面はあったが、カバーニとスアレスを含む全員が身体を張り、決定機を作らせない。思惑通りに試合を折り返した。
拙攻に喘いだポルトガルだが、B・シウバが局面を打開
流れの中からビッグチャンスを作れなかったポルトガルは、後半もボール回しによる打開を試みる。この攻撃にアクセントをつけたのがB・シウバだ。細かいタッチのドリブルが冴え渡った。そして55分、この小兵アタッカーのチャンスメイクから得たCKが、歓喜の瞬間を生む。ショートコーナーからクロスが上がると、そのボールにジャンプ一番で合わせたペペが、ついにウルグアイのゴールをこじ開けることに成功。これで勝負の行方はまるで分からなくなった。
アトレティコ・マドリードのCBコンビ(ゴディンとヒメネス)がクラブで何度となく対戦しているロナウドを封じている中での失点だ。ウルグアイ守備陣に、気落ちによるわずかな隙が生まれてもおかしくなかった。ポルトガルの勢いが強まりそうなこのターニングポイントで、またしても大仕事をやってのけたのがカバーニだった。
62分、PAの左前方でベンタンクールの横パスを受けると、ダイレクトで右足を一閃。綺麗な弧を描いたシュートがGKルイ・パトリシオの目一杯に伸ばした腕の先を通り、ゴール右隅に突き刺さった。これで2-1。隙が生まれたのはむしろポルトガルの方で、絶対に自由を与えてはならないカバーニをフリーにさせてしまった。
その後、ポルトガルは切り札のクアレスマなどを投入し、同点弾を目指したが、頼みのロナウドがゴディンの徹底マークに遭って沈黙。GKが攻撃参加する最後の攻勢も実らず、ラウンド16敗退が決まった。一方、絶対的な点取り屋という矛と、ロナウドさえも破れない盾という強みを存分に活かしたウルグアイは、さらなる躍進を期待させる出来だった。
[スコア]
ウルグアイ代表 2-1 ポルトガル代表
[得点者]
ウルグアイ代表:カバーニ(7)、(62)
ポルトガル代表:ペペ(55)
文/遠藤 孝輔
theWORLD214号 2018年7月01日配信の記事より転載