中国政府が環境規制強化で操業停止も

デロイト トーマツ茂木氏、最新リスク解説

© 株式会社新建新聞社

工場からの排煙で町中がスモッグに覆われる中国の都市(出典:Flickr)

有限責任監査法人トーマツは6月28日、「グローバルビジネスリスク記者勉強会」を開催。デロイト トーマツ 企業リスク研究所主席研究員の茂木寿氏が、今年6月時点で日本企業に影響を及ぼすグローバルリスクとして、中国政府の環境規制強化など4つの話題について解説した。

■中国政府が環境規制を強化

中国では環境関連の規制強化が急速に進み、日系企業が制裁金や操業停止命令を受けるケースが相次いでいる。かつて中国は日本国内と比べて環境規制が緩いイメージがあり、環境規制適用コストが少なくて済む傾向があった。だが法制度自体は以前から日本と同等の規制があり、近年になって政府が取締強化の方針を打ち出し、制裁金や操業停止の命令が相次いでいる。

日本貿易振興機構(JETRO)の調査によれば、中国当局の環境処罰状況は、差押件数で2015年に3697件だったものが2017年は1月~11月までに1万8332件と3年間で4.96倍に増加。生産制限停止件数も2017年は1月~11月まで8756件と、2015年の2512件と比べ3.49倍に増加しているという。(https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/e81c33696a92daca.html

日系印刷大手企業も、包装材の製造工場が大気汚染の規制違反に問われ、日本円で約数千万円の制裁金と一部操業停止を受けた。茂木氏は「自社はもちろん取引先企業が環境規制対策をきちんと実行していることを改めて確認するとともに、万一操業停止となった場合の代替拠点も押さえておく必要がある」とした。

■米政府が自動車関税の引き上げ検討

トランプ政権は5月23日、安全保障を理由に米国内に輸入される自動車に課される関税を現在の2.5%から最大25%に引き上げる検討に入った。日本の自動車メーカーは輸出全体の4割を米国に輸出しており、引き上げが実施されれば日本経済への影響は大きい。

茂木氏は、追加関税実施に備えて十分な影響評価と対策立案、生産計画の見直しを検討するよう促すとともに、「トランプ政権は11月の中間選挙をにらみ自国優先主義の傾向を強めており、周囲を驚かせる発言でも、その後政策として実現されているものが多い。思わぬ分野に影響が及ぶ可能性があり注意が必要」とした。

■ブラジル ストで物流停止 国内経済に打撃

ブラジルの大手石油会社が昨年7月に国際原油相場にあわせて燃料価格を変動させる制度を導入したことにより国内の燃料費が高騰。これに抗議するトラック運転手らのストライキに発展し、国内ではあらゆる流通が停止し、工業や農畜産業までブラジル国内経済に大きな打撃を与えている。

ブラジルに進出する海外企業はこれまでも、長距離道路などインフラ整備の未熟さ、税制の複雑さ、治安の問題など、いわゆる「ブラジルコスト」に頭を悩ませてきたという。茂木氏は「今回の問題は、燃料価格の高騰だけでなく、景気低迷、政治腐敗など様々な国民の不満が重なっている。今後どのような方向に発展していくか、現地に支社や取引先のある企業は、引き続き動向に注意してほしい」とした。

■サウジアラビア 資金調達困難で情勢不安

サウジアラビアでは、ムハンマド・ビン・サラマン皇太子のもと、近年インフラ事業など財政拡大しており、資金調達が急務となっている。このため国債としての借入以外に、国営石油会社の株式を海外で上場することを画策。ところが情報開示義務等の条件を満たせず、上場が難航している。資金調達に失敗すればサウジアラビアが財政危機に陥り、石油価格の変動に大きな影響を与える可能性があるという。

茂木氏は「サウジアラビアは皇太子のもと強硬な外交姿勢によりイランやカタールなどとの対立を鮮明にするなか、ロシアやアメリカなど大国の思惑も絡み、中東情勢は急速に不安定化している。日本企業は対岸の火事とみるのではなく、原油価格変動が自社事業に及ぼす影響リスクを分析しておくとともに、価格高騰による収益悪化が長引いた際の事業撤退基準などをあらかじめ明確にしておく必要がある」とした。

日本企業が直面する海外リスクの動向について解説する茂木寿氏(6月28日、東京都内)

(了)

リスク対策.com:峰田 慎二