カネミ油症50年 本紙記事、ネットで反響 被害者に同情、企業に怒り

 長崎県など西日本一帯で健康被害を広げたカネミ油症事件の被害実態を伝える本紙不定期連載「生きて カネミ油症50年の証言」。6月24日付の初回記事をインターネット上に掲載したところ、被害者への同情や原因企業への怒り、食の安全に対する不安など900件以上のコメントが投稿され、大きな反響があった。記事を読んだ人たちは油症の惨禍に何を思ったのか。
 事件はカネミ倉庫(北九州市)が食用米ぬか油を製造中、熱媒体のカネカ製ポリ塩化ビフェニール(PCB)が混入し発生。記事では五島市内の女性(79)が汚染油を料理に使い家族に食べさせた後悔、健康被害や差別などに苦しみ続けた半生を取り上げ、24日午前11時半、「Yahoo!ニュース」で配信。翌日午後7時時点で949件のコメントがあった。
 「理不尽」「母親は悪くない」。投稿では女性をかばう声が目立った。夫や息子3人との暮らしは貧しく、女性は通常より安い油を購入。一部に「安い油を買ったからだ」とする自己責任論もあったが、「主婦心理として普通だ」と反論する声が多かった。
 原因企業に対しては「社会的責任を果たしていない」「賠償が足りない」など批判が集中。同時に行政機関に積極的な救済を求める声が相次いだ。過去の公害事件を引き合いに「日本では企業への罰則が甘い」との指摘も。現状はカネミ倉庫が認定患者の医療費の一部などを支払っている。
 食の安全に絡めて外国産の食材や食品添加物に漠然と不安を感じ「今起こってもおかしくない」と訴える人、「事件を知らなかった」とする人、事件の記憶の風化を懸念し報道機関にカネミ油症を取り上げ続けるよう求める人もいた。
 反響を受け、カネミ油症被害者五島市の会の旭梶山英臣会長(67)は「家族に油を食べさせたことを思い悩む被害女性は多い。50年という長い年月がたち、被害者は声を大にして救済を求められない状況。多くの人に事件を知ってもらい、状況を理解してほしい」と話した。

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