【丸紅建材リース創立50周年】〈新社長インタビュー桑山章司氏〉「喜びを分かち合える会社」に/人材確保・育成に注力 戦略投資国内外で推進/丸紅グループのネットワーク生かす

 丸紅建材リースは今年11月に創立50周年を迎える。今年6月に就任した桑山章司社長に50周年を迎えての想いと新社長としての抱負を聞いた。(村上 倫)

――50周年を迎える感想から伺いたい。

 「50年は長くも感じるが重仮設業界では若手。業界自体が長きに渡って社会から必要とされていると改めて実感している。高度成長期やバブル経済期には業容を拡大し、バブル崩壊やリーマン・ショックによって厳しい事業環境となりリストラを行うなど様々な順風・逆風を経ての50周年。お客様を始めステークホルダーの皆様へ感謝すると共に、その気持ちを変えずに事業に取り組みたい。また、周囲の皆さんの支援に加えて、社員の信用・信頼を大事にする姿勢が事業を長く続けることができた要因だと思っている。今後もこうした姿勢を続けていきたい」

――節目の年に社長へ就任されましたが抱負を。

 「これまで丸紅で仕事をしてきたが丸紅建材リースは初めて関わる会社。しかし、重仮設事業は社会基盤を支える大事な仕事であると認識している。事業環境は足元は堅調で、東京オリンピック・パラリンピック後にはリニア中央新幹線や都市の再開発、インバウンドなどの需要が続く。高度経済成長期に建設された様々なインフラや建物の老朽化対策など商売の種は多いが必ずしもフォローとは言えない環境となるかもしれない。どのような環境下でも全てのステークホルダーに役立つ仕事をしていきたい」

――丸紅建材リースの印象は。

 「社員が真面目に誠実な姿勢で仕事をしていると感じた。顧客や協力企業をとても大事にしており、信用や信頼関係を非常に大切にしている。こうした信用・信頼に応えていかねばならないと強い意志を持って真っ当な生き方、仕事をしている社員に応えねばならないという重い使命に、改めて身の引き締まる思いだ」

――どのような会社を目指しますか。

 「社員全員が社業の発展や社会貢献を肌で感じ、喜びをみんなで分かち合える会社にできればと思っている。コミュニケーションを密に全員のベクトルをそろえ、達成感を一緒に感じることができる会社にしたい。社員教育の充実などを図り体制を整えていく」

――需要環境をどのように認識されますか。

 「首都圏を中心に東京五輪関連、インフラ整備、再開発を中心に建設需要は堅調に推移している。重仮設資材の需要自体も堅調だが、一方で人手不足や建機・輸送機不足などによる工事やプロジェクトへの支障が懸念される」

――そのような中でどのように事業を推進しますか。

 「今年度が最終年度となる中期3カ年経営計画ではコア事業の収益基盤のさらなる強化を掲げている。賃貸重視の方針を継続し地道な賃料引き上げにも努めていく。一方で、賃貸のみにこだわるのではなく材工一式受注の推進を図りたい。工場の設備投資を継続して行うことでコスト競争力強化を進めていく。人材を含めた広い意味での当社のインフラ整備をさらに図っていく。財務体質やコンプライアンス遵守の強化・徹底に加えて人材確保・育成にさらに注力していく」

――具体的な設備投資計画は。

 「工場の設備は更新時期を迎えており、環境が良好な時にできるだけ投資を行っていく。昨年度から設備投資額を増やしており、今年度も前年並を投じる予定だ。作業効率や生産性向上に向けた投資はもちろんだが、一番大きいのは安全対策。現場の高齢化が進んでおり動きやすい職場環境を整えていきたい」

――これまでの中期経営計画の進ちょくは。

 「計画を策定した当時の前提条件から少し離れた事業環境となっており、数値目標では売上目標・収益目標共に達成が難しい状況にある。しかし、自己資本比率やネット有利子負債、配当金や配当性向などは現在の予算をクリアすれば目標を達成できる見込みだ。株主への還元を守れるように取り組んでいく」

 「同時に、中計の柱の1つである戦略投資を推進する。コア事業を助ける国内での投資を中心に進めたい。重仮設事業や基礎工事、運送などの専門知識が適用できる事業や土木工事や建築工事など高いシナジーが見込める周辺事業をターゲットにしたい。海外でも発展の基盤となる新規投資ができればと思っている。既にタイでタイ丸建を展開しているが、特にアジアの伸びゆく経済環境の中で周辺国への展開も図っていきたい。丸紅グループのネットワークやパイプを生かしてよいパートナーを見つけられればと考えている」

 「人材確保についてはダイバーシティをかなり進めている。今年2月には香港出身と台湾出身を各1人ずつ本社で採用したほか今年4月には女性総合職が4人、その内ライン課長が2人誕生している。優秀でやる気がある人がもっと実力を発揮できる職場環境にしていきたい。アジアを中心に優秀な外国人の若手は多く、実際に仕事の飲み込みも早く語学も堪能で事務処理能力も高い。国籍や性別を問わず積極的に採用していく」

――新商品・技術開発については。

 「詳細は言えないが新工法の実証実験などに取り組んでいる。次期中計でも商品開発への投資は増やしていきたい。人材不足や機材不足の中で省力化や工期短縮、コスト抑制に資する工法が求められている。重仮設工事を進める中で現場からの声も多く吸い上げ、お役に立てる新たな商品・工法を提供していきたい」

――海外事業の現状と展望は。

 「タイはバンコクを中心にインフラの整備が進んでおりタイ丸建の仕事は旺盛だ。プラユット首相も国内インフラの整備を重点施策に掲げており、当面事業環境は良好と見ている。積極的に需要を捕捉したい。また、中国でも鋼矢板のリース業者に丸紅グループで投資している。中国の土木・建設市場はケタ外れに大きく重仮設分野も参画できる部分が多い。パートナーを大事に事業を進めたい」

――次の50年に向けてどのようなことが必要と感じますか。

 「重仮設業は非常に大事な事業だが国内では人材確保が難しい時期が継続している。原点に立ち返り信用・信頼を大事に、今までの良いところを継続してやっていく。事業拡大のために経済成長している国や地域に出ていくことが求められるが、人材確保が重要になる。独自のネットワークや知見に加えて丸紅グループの力を有効活用することで差別化を図ることができると考えている」

略歴

 桑山 章司氏(くわやま・しょうじ)79年一橋大学商学部卒業、丸紅入社。03年非鉄金属部長、08年執行役員金属資源部門長代行、11年常務執行役員金属部門長、12年代表取締役常務執行役員、社長補佐、金属部門管掌役員、15年常務執行役員、アセアン・南西アジア統括、アセアン支配人、丸紅アセアン会社社長、18年4月丸紅建材リース顧問、同年6月社長就任。1956年4月15日生まれ、62歳。京都府出身。

プロフィール

 「皆に実力を発揮してもらわねば仕事にならない。良いところを認識しつつ直してもらわねば」と自他に厳しく接してきた。一方で「基本的にはナマケモノ。リラックスすることが趣味」で、休日はゴルフや散歩など好きなことをして過ごすとか。座右の銘は丸紅の初代社長・市川忍氏が残し社是でもある『正・新・和』で「特に最近大事に感じる」という。世の中では「相反する命題を同時に実現することを求められる。その達成には『バランスよく』を意識したい」と。

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