BCPの構築レベルによって課題に格差 アンケート結果から読み解く大阪北部地震への対応の課題(第1回)

対策本部の設置の遅れや、トップ不在による指揮の遅れ

リスク対策.comでは、6月18日(月)に大阪北部で発生した地震が企業の事業活動に与えた影響について、緊急のアンケート調査を実施した。その結果、BCPの構築レベルに応じて、事業継続の課題に差が生じている傾向が明らかになった。特に差が大きかったのが「対策本部の設置」や「トップ不在による指揮の遅れ」。
「BCPを構築し定期的に訓練や見直しを実施している」企業については、これらの項目は大きな課題とはならなかったと回答しているのに対し、「BCPを策定したままで見直しをしていない」、あるいは、「BCPを策定し非定期的に見直しや訓練を行っている」とした企業については、課題が大きかったと回答した。

(※ただし、「BCPを非定期的ではあるが訓練や見直しを実施している」とした企業と、「策定したままで訓練も見直しも行っていない」とした企業では、逆転現象もあり、さらなる検証が必要)。

写真を拡大 BCPが想定通りに機能しなかった要因別影響度:BCPを構築し定期的に訓練・見直しを実施している企業群が赤の点線。他に比べて、BCPの課題が少なかったことが分かる。

回答者の属性

これらのBCPの課題については、次回以降、改めて解説するが、まずはアンケート結果の概要を解説する。

今回のアンケート調査は、6月22日~29日までの1週間、リスク対策.comのメールマガジン購読者で、今回の地震で震度5弱以上を観測した自治体に何らかの自社施設を有する企業を対象に行い、148の有効回答を得た(全回答173のうち、震度5弱以上を観測した自治体に自社施設がないとした回答などは除いた)。

回答企業は、上場企業と非上場企業がほぼ半数で、企業規模では1000人以上の企業が約6割を占めた。業種別では製造業が35%と最も多く、次いで情報通信業および卸売・小売業(それぞれ13%)、サービス業(9%)と続く。また、今回の地震で震度5弱以上を観測した地域(市町村)にある自社施設は、「支社・支店」が63%と最も多く、次いで「営業所・販売所」が30%、「本社・本店」があるとした回答は22%だった。

「BCPを定期的に見直している」が45%

BCPの構築レベルに関しては、「1.BCPは策定していないし、策定する予定もない」「2.BCPは策定していないが策定中・策定予定」「3.BCPは策定したが一度も見直していない」「4.BCPを策定し、非定期ではあるが見直し訓練を実施している」「5.BCPを策定し定期的に訓練・見直しを実施している」の5段階の中から選んでもらった。結果としては、「5.BCPを策定し定期的に訓練・見直しを実施している」が約45%と最多だった。BCPの専門メディアであるリスク対策.comの読者とは言え、東日本大震災以降、BCPの策定が進んだだけではなく、着実に企業に浸透していることを裏付けた。

写真を拡大 BCPの運用状況から見たBCPの構築レベル:「BCPを策定し定期的に訓練・見直しをしている企業」が最も多かった。

次回以降、これらのBCPの構築レベルに応じて、どのような差が生じたかを解説する。(続く)

<本調査結果のサマリーは、7月10日より無料ダウンロードいただけるよう準備を進めております。また8月上旬には今回の地震に関するセミナーを開催する予定です>

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