国史跡の「山王神社」「爆心地」 指定範囲拡大へ調査 長崎市委員会

 長崎市の国指定史跡「長崎原爆遺跡」の調査検討委員会(会長・下川達彌活水女子大学術研究所特別教授、5人)は2日、長崎市平野町の長崎原爆資料館で会合を開いた。市側の中村明俊・同館長は五つの原爆遺跡のうち調査が比較的進んでいる「山王神社二の鳥居」(坂本2丁目)と「爆心地」(松山町)を軸に、被爆75周年となる2020年にそれぞれ国指定の範囲を拡大できるよう調査・検討を進める方針を示した。

 長崎市は、爆心地から約800メートルの山王神社について2013年度から続けている調査の現状を報告した。被爆し倒壊した「三の鳥居」「四の鳥居」の前後に付いていたとみられる扁額(へんがく)計4基などの石造物を新たに境内で確認し、被爆直後の写真に写っている樹木と同一とみられる樹木が現存していることなども紹介した。

 考古学や歴史などの専門家でつくる検討委の委員は「樹木の専門家にも調査依頼すべき」「展示の在り方を含め次のステップを考える必要がある」と指摘。「国指定エリアの拡大を考えてもいい」との提案もあり、中村館長は「被爆75周年の節目に何らか拡大したいと思っている」と述べた。

 長崎原爆遺跡はほかに「旧城山国民学校校舎」「浦上天主堂旧鐘楼」「旧長崎医科大学門柱」があり、2016年10月に国指定を受けた。検討委は2014年度に長崎市が設置した。

山王神社で新たに確認された鳥居の扁額。上下反転しており、下から上へ「山王宮」と刻字されている=長崎市坂本2丁目(市提供)

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