自然豊かな湾岸が広がる九十九島の一つに数えられる長崎県佐世保市の黒島。地元のカトリック信徒で、構成資産「黒島の集落」の観光ガイドを務めている。「先祖が命懸けで守った信仰の歴史が世界に認められた」と喜びをかみしめた。
キリシタン弾圧が激しかった江戸時代後期。「外海などから信徒約600人が黒島へ移住し、ひそかに信仰を守り続けた」。大村さんの先祖もその一人。一族は苦難の歴史を語り継いできた。
信仰の拠点である黒島天主堂は1998年に国重要文化財に指定。翌年、漁師だった大村さんは島の有志と黒島史跡保存会を設立し、自ら観光ガイドとなった。最盛期に2千人以上が暮らした島の人口は、仕事を求めて流出が続いている。現在の人口は約430人。「観光が産業になれば、にぎわいが戻る」と思った。
「長崎の教会群」としては登録推薦を取り下げられ、落ち込んだ日もあった。それでも観光案内を禁教期に焦点を当てた内容に見直し、ガイドも14人に増えた。「多くの人に黒島の歴史と魅力を伝えていく」。それが島の未来へつながると信じている。