【新社長】〈山和鋼管・鈴木千代美氏〉「社員個々の能力引き出す」 現場の声反映、品質・安全管理に注力

 当初予定より若干早い社長就任だったが、輸出事業をメーンに社内での実績は申し分なし。創業家からは3人目の社長となる。実父で長らく2代目社長を務めた明会長からは「会社のことは隅々まで何でも知っておけ」とアドバイスされたという。

 山和鋼管は自動車や建産機部品向けが圧倒的に多い引抜鋼管メーカー業界で、地質調査などに使用される掘削用ボーリングロッドがメーンの製造品種。販売の6~7割はカナダを中心とした海外向けで、約半世紀前から商社を挟まない直販体制を継続しているという他社とは異なる特徴を持つ。特に継目無(シームレス)鋼管を母材にリロール成形で管端部分を厚肉に加工した両管端厚肉鋼管SSDR(Sanwa Special Drill Rod)は、海外のマイニング(採掘)業者の間では認知されており、高い評価を得ている。

山和鋼管・鈴木社長

 語学が堪能で山和鋼管には輸出担当として入社。毎年3月にカナダのトロントでマイニング業界の展示会があり、自身が入社以来窓口を担当した現地顧客らと旧交を温めるのが恒例となっている。

 ここ数年ボーリングロッドの需要は低迷していたが「底は打った」との見解。世界3大マイニング業者との取引実績があり、今後の需要増に期待を寄せる。

 会社ではまず「個々の能力を最大限に引き出すため、風通しのよい会社」を目指す。社長就任後、すぐに社員に会社や工場の改善点を個々にリストアップしてもらった。また6月からは工場に「意見箱」を設置。随時、現場からの生の声を拾っていき、品質と安全管理に反映させていく。今年9月には久方ぶりにウェブサイトも更新する予定だ。

 1992年に立ち上げた本社工場も操業開始から四半世紀が経過。建屋や設備の一部などで、老朽化更新が必要となった箇所から順に手を加えていく。

 「風評に惑わされることなく、常にまっすぐでいたい」との思いから「真」という言葉を大事にする。趣味の料理では、毎週末両親のために腕を振るう。クラシックバレエは幼稚園の頃から断続的に続けており、今は旧友の教室に毎週日曜日の午前中レッスンに通う。今年9月には舞台も控えており、仕事も趣味も忙しい日々が続きそうだ。(後藤 隆博)

 略歴

 鈴木 千代美氏(すずき・ちよみ)高校卒業後、2年間豪州ビジネスカレッジで秘書課専攻、語学留学を経て山和鋼管入社。輸出業務を担当する。2008年12月に常務、12年4月専務に就任し、今年3月から現職。1970年10月13日生まれ、神奈川・横浜市出身。

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