BCPが機能しなかった要因トップ5 アンケート結果から読み解く大阪北部地震への対応の課題(第4回)

アンケート調査は、6月22日~29日までの1週間、リスク対策.comのメールマガジン購読者で、今回の地震で震度5弱以上を観測した自治体に何らかの自社施設を有する企業を対象に行い、148の有効回答を得た(全回答173のうち、震度5弱以上を観測した自治体に自社施設がないとした回答などは除いた)。
回答企業は、上場企業と非上場企業がほぼ半数で、企業規模では1000人以上の企業が約6割を占めた。業種別では製造業が35%と最も多く、次いで情報通信業および卸売・小売業(それぞれ13%)、サービス業(9%)と続く。また、今回の地震で震度5弱以上を観測した地域(市町村)にある自社施設は、支社・支店が63%と最も多く、次いで営業所・販売所が30%、本社・本店があるとした回答は22%だった。

 

6月18日(月)に大阪北部で発生した地震に関する企業へのアンケート調査(有効回答数148)で、BCPが十分機能しなかった要因について聞いたところ、本連載の初回でも紹介した通り、BCPの構築レベルに応じて、事業継続の課題に差があることが明らかになった。

まず、全回答者を通して、最も大きな要因とされたのが「関係部門との情報共有の遅れ」。次いで2位「社員の防災意識の低さ」、3位「そもそも今回の地震はBCPの発動対象ではない」、4位「災害対策本部の設置の遅れ」、5位「社員の安否確認の遅れ」。以降の順位は下記のグラフ1の通り。

回答者には、要因として該当する各項目ごと、「まったくそう思わない」を1、「強くそう思う」を5として、どのレベルにあてはまるかを選択してもらい、その平均値を算出した。例えば1位の「関係部門との情報共有の遅れ」は平均値が2.19ポイントだった。つまり、1位とはいえ、3ポイント以下であることを考えると、全体的には、それほど強く課題と感じているわけではないことが推察される。さらに、全体傾向として、物理的な被害は、すべて下位となっていて、対応面における課題が上位を占めた。

写真を拡大 グラフ1 BCPが機能しなかった理由

BCP策定レベルごとに上位5つの要因を比較

BCPの構築状況別に回答を分析してみると、その順位が大きくことなることがわかった。

BCPの構築状況については、連載の1回目で紹介した通り、BCPの運用状況から「1.BCPは策定していないし、策定する予定もない」「2.BCPは策定していないが策定中・策定予定」「3.BCPは策定したが一度も見直していない」「4.BCPを策定し、非定期ではあるが見直し訓練を実施している」「5.BCPを策定し定期的に訓練・見直しを実施している」の5段階の中から選んでもらった。

これらの中から、BCPを既に策定している3以上のBCP構築レベルごとに、BCPが機能しなかった要因を降順にまとめたのがグラフ2。

例えば、BCPを策定したままで見直しも訓練も行っていない企業では、「対策本部の設置が遅れた」が、BCPの機能しなかった最も大きな課題であったのに対し、BCPを定期的に見直し訓練を行っている企業にとっては、そのことはそれほど大きな影響とは考えられていなかった。同様に、BCPを策定したままで見直しも訓練も行っていない企業にとって「BCP訓練があまり役に立たなかった」「主要メンバーの代替要員を決めていなかった」は2位と3位であったが、BCPを定期的に見直し訓練を行っている企業にとっては、それほど大きな要因とはならなかったことが推察できる。
逆に、BCPを定期的に見直し、訓練を実施している企業では、BCPが機能しなかった理由として「そもそも今回の地震はBCPの発動対象でない」が1位で、「関係部門との情報共有の遅れ」「社員の防災意識が低かった」が2位、3位と続いた。このほか、「今回の地震のような被害を想定していなかった」「トップ不在で指揮が遅れた」も構築レベルよる差が大きかった。

写真を拡大 グラフ2 BCP構築レベル別の課題

写真を拡大 グラフ3 BCP構築レベル別にみたBCPが機能しない要因の格差

次回以降、大阪府北部地震における企業の対応で、役立ったものを紹介する(続く)。

第1回:BCPの構築レベルによって課題に格差
第2回:BCPを定期的に見直している企業ほど効果を感じた
第3回:「数時間から1日」事業が止まった

<本調査結果のサマリーは、7月10日より無料ダウンロードいただけるよう準備を進めております。また8月上旬には今回の地震に関するセミナーを開催する予定です>

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