ケフィア事業振興会 国民生活センターに相談が急増、資産売却も

 (株)ケフィア事業振興会(TSR企業コード:298080745、以下ケフィア)と、関連のかぶちゃん農園(株)(TSR企業コード:296009326)に関する国民生活センターへの相談件数が急増している。
 ケフィアは会員に太陽光発電所の太陽光パネルオーナーになるよう勧誘していた。ところが、発電所の一部不動産をソーシャルレンディング大手のmaneo(株)(TSR企業コード:297073834、東京都千代田区)に担保を提供し、昨年7月以降、ケフィアのグループ会社を債務者として20億円超の資金を調達。一部の調達金利は年利15%と高金利もあった。
 maneoが設定した不動産担保は今年3月末にすべて抹消されている。だが、昨年9月、ケフィアのグループ企業にmaneoが設定した動産譲渡登記はまだ残るなど、太陽光関連の不動産や賃借権に動きが出ている。

 ケフィアは、これまでに昨年11月ごろから会員への一部支払いが遅れていることを明らかにしている。一部会員からの残高返済の要請に応じておらず、新たな契約への「振替え」も提案しているケースもみられる。高齢者を中心に会員は数万人にのぼるとみられるが、一部会員の間では不満が高まり、提訴や仮差押えなどのトラブルに発展している。
 東京商工リサーチ(TSR)は、国民生活センターに「ケフィア事業振興会」、「かぶちゃん農園」に関する情報公開を請求した。開示された資料によると2008年5月から2018年6月までの10年間の相談件数は1,245件だった。ただ、今年5月だけで143件に達している。1-6月累計は計537件と相談件数が急増しているが、これは社会問題化し破産したジャパンライフ(株)の相談件数(2015年4月~2017年12月まで515件)をわずか半年間で上回る異常ぶりだ。

国民生活センター相談件数

 ケフィアは太陽光発電所「かぶちゃんの太陽光パネルの森」を順次開設し、長野県内に20カ所以上の発電所を構えている。
 TSRが独自入手した複数の「かぶちゃん農園の太陽光パネルオーナー募集」のパンフレットや契約書によると、会員が太陽光パネルを1枚あたり5万円で購入する。会員がパネル所有権を10年後まで持つ。契約内容によると、還元金額は、年間7,200円の売電価格と2,500円の償却買戻価格の合計9,700円を10年間受け取ることになっている。
 ところが、パネルオーナー募集のパンフレットや契約書には発電所の住所が記載されていない。ホームページでも公表していない。TSRが発電所の所在地をケフィアに問い合わせたが、取材を拒否された。
 TSRは独自取材で所在地が判明したケフィアの太陽光発電所を数カ所、実際に確認した。
 カーナビも役立たない辺鄙な山奥や町外れだが、いずれも「太陽光パネルの森」と「再生可能エネルギー発電事業の認定発電設備」の看板が掲げられている。外側から見る限り、太陽光パネルの状態は良好だった。

かぶちゃんの太陽光パネルの森・宗賀(長野県、7月撮影)

かぶちゃんの太陽光パネルの森・宗賀(長野県、7月撮影)

maneoから金利15%など多額の資金を調達

 ケフィアの太陽光発電所の土地は、ケフィアグループが所有するものと、地主から土地を借りて賃借権を持つ2パターンがある。
 ケフィアグループが所有する不動産登記を6月に閲覧した。その土地にはソーシャルレンディング大手のmaneoが2017年7月以降、グループで太陽光発電所の運営などを手掛けるかぶちゃんメガソーラー(株)(TSR企業コード:298206870)を債務者とした計20億円を超える担保を設定。一部は年利15%の高利の抵当権も設定されていた。
 maneoグループは、一般投資家から資金を集め、企業に貸し付けるソーシャルレンディング会社。maneoはケフィアへの貸付条件について、「個別企業の条件などは非公開」と詳細を明らかにしていない。
 今年3月末、maneoが不動産に設定した担保はすべて抹消された。だが、かぶちゃんメガソーラーに設定された動産譲渡登記は、現在も抹消されていない。

太陽光発電所の不動産や賃借権を売却、譲渡

 ケフィアは、maneoの担保が抹消されると、太陽光発電所の不動産や賃借権を他社に売却、譲渡している。
 ケフィアが一部土地の所有権を売却したのは担保抹消日と同日の3月30日。売却先は、かぶちゃんフーコ合同会社(TSR企業コード:027767221、東京都千代田区)だ。
 かぶちゃんフーコは、今年3月15日に設立されたばかり。ジャスダック上場の(株)フーマイスターエレクトロニクス(TSR企業コード:295124199、以下フー社)が、TSRの取材に取材に「関係会社」と認めている。
 フー社のプレスリリースによれば、フー社が100%子会社の匿名組合を通じ、6月7日までに23億1,868万円を出資。太陽光パネルなど含めた太陽光発電所を10カ所取得し、さらに追加で発電所の取得を進めている。
 これとは別にケフィアは複数の賃借権を今年5月以降、別会社へ譲渡し、太陽光発電事業の資産売却を進めている。だが、太陽光パネルオーナーは「何も聞いていない」という。

 太陽光パネルは契約上、会員に所有権がある。だが、ケフィアは発電所の不動産や賃借権を売却、譲渡した。契約上の問題やパネルオーナーへの売電配当、償却買戻などの資金手当てをどうクリアするのか。会員が納得できる説明責任を問われている。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2018年7月6日号掲載予定「取材の周辺」を再編集)

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