神戸製鋼、高炉操業で新技術 転炉スラグ活用しコスト削減、加古川で実用化へ

 神戸製鋼所は、高炉操業で生産コストを減らせる国内初の新技術を開発した。リサイクル用途が限られている製鉄副産物の転炉スラグを活用し、高炉内の通気性を改善。通気性を保つために必要なコークスの使用量を減らすことでコストを低減する。加古川製鉄所(兵庫県加古川市)で実用化する方向で最終調整しており、導入時期などを詰めている。

 神戸製鋼が開発したのは「転炉スラグの羽口吹き込み技術」。転炉スラグを微粉状にしたものを高炉の羽口から微粉炭とともに炉内へ吹き込む。昨年10月末に休止した神戸製鉄所(神戸市)の第3高炉(炉容積2112立方メートル)に適用し、安定操業を維持しながら一定のコスト削減効果を確かめた。

 適用期間は2016年4月から同高炉を休止した17年10月末までの約1年半。今後はより大型となる加古川の高炉で実用化の準備を進める。

 新技術は、高炉内の「鳥の巣」と呼ばれる領域の通気性を改善できる。高炉の羽口の先には「レースウェイ」と呼ばれる燃焼空間がある。この空間の奥に生じる粘り気の強いスラグ層が「鳥の巣」だ。

 新技術を適用すると、転炉スラグに含まれる酸化鉄(FeO)が有効に働き、流れにくいドロドロの状態の「鳥の巣」が、さらさらに変わり滴下しやすくなる。結果として「鳥の巣」のスラグ層の厚みが薄くなり、高炉内の通気性が高まる。スラグでスラグを制する格好だ。

 高炉の通気性改善によりコークス使用量を減らせることも確認。神戸製鉄所の高炉で、銑鉄1トン生産当たり15キログラムの転炉スラグを吹き込んだ結果、コークス比(銑鉄1トン生産当たりのコークス使用量)を数キログラム減らすことに成功した。

 神戸製鋼はこれまでも微粉炭の多量吹き込みによって可能な限りコークスを減らす高炉の操業手法をとってきた。ただ、微粉炭の使用量が増えるにつれて「鳥の巣」が肥大化してしまう弊害が生じていた。微粉炭と同時に転炉スラグも吹き込むことで「鳥の巣」の成長を抑制し、高炉操業のさらなる高度化を目指す。

 一般的に転炉スラグは粗鋼1トンの生産につき110~140キログラム程度生成する。転炉スラグは道路の路盤材などとして使われるものの、セメント原料の高炉スラグと比べるとリサイクル用途が限られている。今回の新技術を適用すれば転炉スラグの製鉄所内リサイクル率を改善できる利点もある。

 神戸製鋼は、高炉内の通気性改善に最適な転炉スラグの吹き込み量は銑鉄1トンの生産当たり15~20キログラム程度とみている。転炉スラグを粉砕する事前処理には既存設備を活用することなどを検討する。

 神戸製鋼は加古川で第2高炉(同5400立方メートル)、第3高炉(同4844立方メートル)の高炉2基を操業している。神戸製鋼はコークスの外部調達比率が高炉他社に比べて高い。転炉スラグの活用により高炉で使用するコークスを減らし、コスト競争力強化を目指す。

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