②費用負担 保存修理 信徒の重荷に

 佐世保市の構成資産「黒島の集落」。島中央部の丘には、青空に映えるれんが造りの黒島天主堂(国指定重要文化財)がたたずむ。1902年にフランス人のマルマン神父の指導で信徒が建てたロマネスク様式の建築は、国内で最も完成度が高い大規模教会の一つに数えられる。
 しかし、細部をよく見れば老朽化による傷みが目立つ。祭壇裏の壁や柱の土台の表面がはがれ落ちているほか、天主堂の外門には亀裂が入り、立ち入りを禁じるロープが張られている。大山繁主任司祭(72)は「地震が起これば崩れ落ちる可能性がある。ぎりぎりの状態で保たれている」と不安そうに話す。
 各構成資産の教会は、いずれも老朽化が進み、保存修理が喫緊の課題となっている。世界遺産登録後、最初に工事を始めるのが黒島天主堂。11月に着手し、2020年10月末に完了する。県や市によると、総事業費は約5億3千万円。特に費用がかかるのが建物全体の耐震補強で、「れんが造りの特殊な構造に加え、補強部分が見えないよう隠す高い技術が求められる」(市教委文化財課)。
 黒島天主堂の場合、国が保存修理費の6割を負担。県、市のほか、構成資産保全を目的に県が積み立てている基金からも補助する。残りは5千万円弱となる見通しで、天主堂を所有する長崎大司教区と主に地元の信徒が負担する。
 黒島天主堂は1975年ごろに大規模な改修をした。当時を知る信徒によると改修費は約5千万円で、一世帯当たり20万円ほど出し合った。だが、当時とは島の状況が大きく異なる。75年には約1500人が暮らしていたが、過疎化で現在は約430人に減った。人口の8割が信徒とされるが、島内では「前回の改修よりも各世帯の負担がもっと重くなるのではないか」と不安の声が強い。
 県が資産保全のために積み立てている基金は2015年に創設。主に企業・団体の寄付で8400万円が集まっている。これまでに改修工事の補助金として江上天主堂(五島市)に160万円、大浦天主堂(長崎市)に350万円を支出した。
 今後、基金は約1億5千万円まで確保するめどが立っているが、目標額の3億円には遠い。県は登録を機に寄付の呼び掛けを強化する意向だ。4月からは県庁や関係市町の庁舎などに募金箱を置き、少額の寄付も募っている。県は「県民全体で遺産を支えてほしい」と呼び掛けている。

黒島天主堂の外壁やアーチ部分に入った亀裂を指さす大山主任司祭。付近はロープを張り立ち入りを禁止している=佐世保市黒島町

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