意見書可決は5市町議会 「核禁条約 日本も参加を」 国連採択から1年

 核兵器の開発や使用などを法的に禁止する核兵器禁止条約が国連で採択され、7日で1年。米国の「核の傘」に依存している日本政府に対し条約への署名、批准を求める意見書を県内で可決したのは、県議会と21市町議会のうち5市町議会にとどまることが、長崎新聞社の調べで分かった。
 意見書は議員提案や、市民団体などの陳情・請願を基に議会が可決する。5議会は可決順に東彼東彼杵町議会(昨年9月)、長崎市議会(同12月)、西彼長与町議会、対馬市議会、雲仙市議会(いずれも今年6月)。
 東彼杵町議会は意見書で「唯一の被爆国である日本は先頭に立って条約締結に努力すべきだったが交渉を欠席し、世界から失望の声が聞かれた」と批判した。
 対馬市議会は、政府の「核兵器の非人道性を知る日本は核廃絶へ国際社会を先導する責務がある」との見解を引用し、「非人道性を認めることと核の傘への依存が両立しないのは明らか」と指摘。雲仙市議会も「条約に背を向けていては世界を先導する責務は果たせない」と訴えた。
 一方、県議会では昨年9月、一部会派が意見書案を示したが、「日本は核保有国と非保有国の橋渡しを担うべき。やみくもに条約参加を求めるべきではない」と反対が多く採用されなかった。溝口芙美雄議長は「核廃絶への思いは同じ。アプローチの違いだ」と話している。
 大村市議会は「妥協案」(三浦正司議長)として署名、批准は求めず、核廃絶へ「一層の取り組み」を求める意見書を6月に可決した。
 米軍基地がある佐世保の市議会では意見書に関する議論は今のところない。市岡博道議長は「日本が核保有国に守られている現実があり、理想論だけではやっていけないと考える議員が多い」と説明する。朝長則男市長も日本や各国に署名、批准を求める「ヒバクシャ国際署名」に賛同していない。他の20市町長と中村法道知事は署名している。
 原水爆禁止日本協議会によると、都道府県議会と全国市区町村議会の2割弱に当たる約300議会が意見書を可決済み。被爆地の広島県は24議会のうち12議会だった。

◎ズーム/核兵器禁止条約

 昨年7月7日、国連加盟国の約3分の2に当たる122カ国・地域が賛成し採択された。核保有国や日本などは不参加。50カ国・地域が批准して90日後に発効する。現在59カ国・地域が署名済みで、国内手続きを経て批准したのは11カ国・地域。

「ヒバクシャ国際署名」の街頭活動=6月26日、長崎市浜町

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