【インタビュー】ハースF1の快走を支える富塚裕タイヤエンジニア

 今季序盤から中団グループトップの速さを見せてきたハース。その快走を支えるのが、今年から同チームに加入した富塚裕エンジニアだ。去年までブリヂストンに在籍し、同社がF1活動を行っていた当時はレースエンジニアとして活躍した。

 その後は市販タイヤの開発に携わっていたが、タイヤスペシャリストがぜひほしいという小松礼雄チーフエンジニアの要請を受け、ブリヂストンを退社してイギリスに移住することを決断した。

 今季のハースはトラブルや不運が重なったこともあって、なかなか速さが結果に結びつくことはなかった。それがオーストリアGPで、ロマン・グロージャン4位、ケビン・マグヌッセン5位のダブル入賞。ようやく、今季最高の結果を出すことができた。

──今年からハースに加入して、オーストリアGPの結果には手ごたえを感じたのでは?富塚裕エンジニア(以下:富塚):そうですね。最高の結果が出て、よかったです。

──ご自身にとっても、ベストレースだった?富塚:だと思います。結果が良かったですから。

──レースで路面温度が高くなることは、事前に予想していた?富塚:ええ。デグラデーションがひどくなるだろうとは思ってました。でも路面温度の上がり方は、予想以上でした。金曜日までの天気予報でも、もっと低かったですしね。40℃行かないぐらい。

──ライバルチームもかなり苦しんでましたね。富塚:他はちょっとわかりませんけど、われわれは実際より若干低めに設定してました。なのでレース中は、ちょっとドキドキでした。

──それでもあれだけの速さを発揮し続けた。レース中は、どんな対応をしたんですか。空気圧調整とか?富塚:いえ。走り方ですね。目標の温度域があって、そこを超えないようにと。ウルトラソフトは温度が高くなりすぎないように、目を配ってました。長いスティントを走るソフトは逆に、摩耗が進むと温度が下がってしまうんですね。レース後半は、そこに気をつけましたね。

──毎周のように、ドライバーに注意を促した?富塚:いえ。そこまで頻繁ではなかったですけど、レース後半ライバルチームがブリスターが出て苦しんでましたよね。うちもそれを覚悟して、特にタイヤを傷めそうなコーナーでの走り方を注意したりとか。あとはピットに入ってきた他のマシンのタイヤの写真を撮って、分析したり。

──富塚さんが直接無線で伝えるんですか。富塚:いえ、担当エンジニアに伝えるようになってます。レース中に僕が前に出ることは、ほとんどないです。

──ソフトタイヤでさえあれだけのブリスターが出るのは予想外だった?富塚:そうですね。あそこまでのブリスターは、全員予想外だったと思います。ただフロントタイヤのイン側のブリスターは、実際に仕事をする部分とはちょっと違う。リヤタイヤですね、タイヤのど真ん中に出て、影響が大きかったのは。

──ルノーのカルロス・サインツJr.とか、ほとんどまともに走れてなかったですね。富塚:うちもかなりブリスターが出てましたけど、ドライバーがふたりとも本当にうまくいたわりながら、走ってくれました。

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