パートナーを失ったことでウルグアイの攻撃力半減!?
ウルグアイにとって痛かったのは、ラウンド16のポルトガル戦で2得点したカバーニが負傷でプレイできなかったことだ。パートナーを失ったことでスアレスの動きもいつもどおりとはいかず、代わって出場したストゥアニとの息が合わない場面もあった。ウルグアイの前線は、やはりスアレス&カバーニの2トップでなければならない。改めてそんな印象を受ける90分間となった。
試合は立ち上がりから攻守の切り替えが早い見どころの多い展開となった。高い位置からボールを追いかけていたのはウルグアイで、相手陣内であっても各選手が激しいアタックを仕掛け、フランスのミスを誘った。しかし、そのフランスは最終ラインまで技術力の高い選手が揃っており、プレスをかわされる場面も目立った。
それでも、スピードのあるムバッペは同じくスピードのあるラクサールが抑え、前線のジルーをゴディン、ヒメネスの両CBが自由にさせないことでチャンスらしいチャンスを作らせなかった。いわば中盤での攻防が多く、ボールは行ったり来たりするもののどちらも決定機をなかなか作れなかった。
数少ない決定機をものにしたフランス
前半はこのままかと思われた40分にセットプレイで試合が動いた。マテュイディの出場停止を受けて出場していたトリッソを倒し、ウルグアイは嫌な位置でフランスにFKを与えてしまう。キッカーのグリーズマンがときおりみせるワンテンポずらしたボールに対して、ニアサイドにいたストゥアニとマークについていたベシーノが反応できなかった。ヴァランに走り込まれてヘディングシュートを決められ、先制点を許した。
1点差なら心折れることなく足を動かすことができたかもしれないが、61分に決定的な2点目が生まれた。カウンターからポグバにドリブルで中央突破され、トリッソを経由してフリーのグリーズマンにボールが渡る。優秀なフィニッシャーであるグリーズマンが放った無回転シュートをGKムスレラが両手で弾こうとしたが、急角度で変化したボールに対応できずボールはゴールへ……。
この追加点はウルグアイにとってダメージが大きかった。各選手が必死にボールを追いかけようとするが、フランスの巧みなパスワークについていけない。前半からエンジン全開だったことで運動量も低下し、時間の経過とともに反撃する力がなくなっていった。
88分にはまだ時間が残されていたにも関わらず、ヒメネスが涙を流していた。不用意なファウルによってFKを与えた直後であり、時間を使わせてしまった不甲斐なさを悔いたのかもしれないが、すでに敗戦を受け入れているようにもみえた。
ムバッペ、ジルーは抑えたが、グリーズマンに1得点1アシストを許した。攻撃でもワンタッチ、ツータッチのパスが思うようにつながらず、とくに後半は決定機を作り出せなかった。万全の状態でなければ、とてもフランスとは戦えない。ウルグアイのパフォーマンスに、逆にフランスの強さが表われていた。
[スコア]
ウルグアイ代表 0–2 フランス代表
[得点者]
フランス代表:40分 ヴァラン、61分 グリーズマン
文/飯塚 健司
サッカー専門誌記者を経て、2000年に独立。日本代表を追い続け、W杯は98年より6大会連続取材中。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。サンケイスポーツで「飯塚健司の儲カルチョ」を連載中。美術検定3級。Twitterアカウント : scifo10
theWORLD218号 2018年7月7日配信の記事より転載