高校野球第100回

 長崎市の県営ビッグNスタジアムのスタンドから見下ろすと、グラウンドには前日の大雨がうそのように、球児が懸命にプレーする姿があった。全国高校野球選手権長崎大会がきのう、1日遅れで本格開幕した▲五島高と大崎高の対戦。どちらも島の高校だ。スタンドの一角に両校関係者が陣取り、地理的ハンディも順延の影響も感じさせず、一投一打に声援を送る▲一般観客には多様な人がいる。家族連れ。若いカップル。1人で来ている野球通らしい男性が何人もいて、プレーに鋭い目を注ぐ。そういう人々が高校野球人気を支えている▲選手権は今年、1915年の第1回から数えて節目の第100回を迎えた。「100年」と「100回」との間に時間のずれがあるのは、戦争による中断があったからだ-と、100回記念特集の冊子にある▲前日の開会式には、70~80代の元球児の被爆者5人が招かれたという。野球をやりたくてもやれない時代があったことを忘れないように、という言葉に、歴史の重みをかみしめる▲プレーに、観戦に、好きなだけ没頭できる平和な世の中が、これからの100年も続きますように。ふとそう祈りたくなる。7月のビッグNスタジアムから平和祈念式典が行われる8月9日の平和公園まで、時間的にも空間的にも距離は近い。(泉)

© 株式会社長崎新聞社