<レスリング>《レスリング入門》レスリング・ルール/レスリングの見方

2018年7月現在、運用されているルールを簡易にまとめました。観戦、応援のお供に、ぜひ愛読ください。《pdfファイル》


1、レスリングのスタイル

 全身を使った攻防の「フリースタイル」と、上半身の攻防に限った「グレコローマン」の2種類がある。女子はすべてフリースタイル(本ホームページでは「女子」と表記)、男子は両方のスタイルがある(本ホームページでは「男子フリースタイル」「男子グレコローマン」と表記)。

全身を使った攻防のフリースタイル
上半身のみの攻防となるグレコローマン

2、階級

  階級制で行われ、規定の体重以内の選手によって争われる。オリンピック、世界選手権、全日本選手権等は規定通りに計量するが、選手の健康のため、規定の 2kgオーバーまでを認める場合もある(57kg級の場合は59kgまで=通称「2kgオーバー計量」)。ただし、最重量級は、その下の階級以上の体重が必要。

 シニアの階級は下記の通り。

《男子フリースタイル》57kg、61kg、65kg、70kg、74kg、79kg、86kg、92kg、97kg125kg

《男子グレコローマン》55kg、60kg、63kg、67kg、72kg、77kg、82kg、87kg97kg130kg

《女子》50kg53kg、55kg、57kg、59kg、62kg、65kg、68kg、72kg、76kg

※太字はオリンピック実施階級

※ジュニア、カデットは省略


3、試合場

 直径9メートルの円形マットで行われる。外側の1メートル幅がオレンジ色で区別してあり、「パシビティ・ゾーン(レッドゾーン)」と呼ばれる(注=以前は赤で、その時の名称からレッドゾーンとも呼ばれる)。場外が近いことを選手に知らせる役割をもつ。


4、着衣規定

 世界レスリング連盟(UWW)が公認した赤、または青のシングレット(ユニホーム)を着用し、組み合わせの際の抽選番号で、小番号の選手が赤、大番号の選手が青のシングレットを着用する。シングレットの背中には、国名と氏名を明示することが義務づけられている。
 レスリングシューズを履いて闘い、裸足は認められない。シューズは、試合中に紐がほどけないよう、紐の部分にテープを巻くか、紐のないシューズを使用する。

 出血の場合のため、ハンカチをシングレットの中で所持する。

試合場。直径9メートルの円内が闘いの場となる
試合着。自分のコーナーによって赤と青を使い分ける

5、競技システム

《UWWルール》

(1)組み合わせ抽選は、試合の前日、30分間で実施。それに先立って行われるメディカル・チェックと計量にパスした選手が、組み合わせの抽選を行う。

(2)トーナメント方式で実施し、決勝進出選手に敗れた選手が敗者復活戦へ進み、3位を目指す。

(3)トーナメント表は4の倍数(4・8・16・32・64)になるように組み、4の倍数にならない場合は、抽選番号の大きな選手から(トーナメント表の下方から)クオリフィケーション(注=本ホームページでは「1回戦」と表記)を行い、4の倍数にする。

(4)優勝選手に1回戦で負けた選手と2回戦で負けた選手が敗者復活1回戦で対戦し、3回戦で負けた選手がその勝者と対戦する。準決勝で負けた選手は、敗者復活戦で勝ち上がってきた選手と3位決定戦を闘う。

(5)敗者復活戦の勝者が3位、敗者が5位となる。3位と5位は2選手ずつ。

(6)7位以下の順位は、闘った全試合の勝ち点の合計の多寡で決まる。勝ち点は下記の通り。
・5点=フォール勝ち、警告勝ち、相手の試合途中の棄権、不戦勝
・4点=テクニカルフォール勝ち
・1点=ポイントありのテクニカルフォール負け
・1点=ポイントありの判定負け
・0点=フォール負け、ポイントなしのテクニカルフォール負け、ポイントなしの判定負け、途中棄権、不戦敗

(7)勝ち点の合計が同じ場合の順位は、下記の基準で決定する。決まらない場合は同順位。
・フォールによる勝利数が多い選手
・テクニカルフォールによる勝利数が多い選手
・すべての試合で獲得したポイントの多い選手
・すべての試合で失ったポイントの少ない選手

(8)出場が5選手以内の時は総当たりリーグ戦で実施。最も多くの勝利を得た選手が上位。同じ場合は、勝ち点の多寡、直接対戦結果などで決定。

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《ローカル・ルール》

 インターハイや全日本学生選手権などは、事前の抽選でトーナメントが決まっていることが多い。計量は試合前日の30分間で行う。


6、試合時間

 3スタイル(男子フリースタイル、男子グレコローマン、女子)とも3分×2ピリオド。インターバルは30秒。


7、試合の勝敗

 試合の勝敗は下記によって決まる。

相手の両肩をマットにつけるフォール。ポイントをリードされていても、フォールすれば勝者となれる

■フォール=相手の両肩を1秒、マットにつけた場合

■テクニカルフォール=ポイント差が、男子フリースタイルと女子は10点差、男子グレコローマンは8点差がついた時

■1試合で警告(コーション=反則や消極的な闘いに課せられる)が3度あった場合、警告失格となる(本ホームページでは、勝者を「警告勝ち」と表記)。

■6分間闘い、上記によって決着がつかない場合は、ポイントの多寡で勝敗が決まる。ポイントは決まった技によって、1点、2点、4点、5点とある。

■同点で終わった場合は下記の基準で勝敗を決める。
(1)ビッグポイントの多い選手
(2)警告が少ない選手 
(3)ラストポイントを取った選手 ⇒ 両者とも2点と判定された展開が最後だった場合は、その技を仕掛けた選手が勝利

 


7、ポイント

 試合中に展開された技により、下記のポイントが攻撃側に与えられる。

《男子フリースタイル・女子》

■1点
・場外ポイント(相手を場外に出した時=相手に警告1)
・コレクトホールド(投げ技で、技は正しく展開されたが、相手をデンジャーポジション=肩を90度以上マットに向けさせる=に追い込めなかった場合)=注・男子グレコローマンは2点
・攻撃側の反則(ただし、頭突きなど軽微な反則はブレークのみ、重大な反則は即座に反則負け)
・チャレンジ(ビデオチェック要求)で審議の結果、判定が変わらなかった場合(相手に1点)

■2点
・テークダウン(相手の背後に回って両手・両ひざの4点のうち3点をマットにつかせる、相手に尻もちをつかせて背中をマットに向けさせる等)
・グラウンドの攻防で、相手をデンジャーポジションに追い込んだ時
・ローリング(グラウンドで相手の胴を絞め、1回転する)

■4点
・相手を投げ、一瞬でもデンジャーポジションの体勢に追い込んだ時

フリースタイルはタックル攻め(左)、相手を四つんばいにさせる(中)のが一般的な攻撃。背後に回ることが必要で、右写真のように相手の前方から抑えて四つんばいにしても、ポイントにはならない。、

 

相 手の両肩をマットに90度以上近づけるデンジャーポジション(以前は「ニアフォール」という呼称が一般的。左は2点、投げで一気にデンジャーポジションへ 持ち込めば4点。左のように攻撃選手の肩がマットに向いても失点にはならない(ただし、体勢が崩れて押さえ込まれた場合は2点を失う)

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《男子グレコローマン》

■1点
・場外ポイント(相手を場外に出した時=場外逃避の警告がつく場合は2点)
・チャレンジ(ビデオチェック要求)で、審議の結果、判定が変わらなかった場合(相手に1点)

■2点
・テークダウン(相手の両手・両ひざの4点のうち3点をマットにつかせる、相手に尻もちをつかせ、背中をマットに向けさせる等)
・グラウンドの攻防で、相手をデンジャーポジション(肩を90度以上マットに向けさせる)に追い込んだ時
・ローリング(グラウンドで相手の胴を絞め、1回転する)
・コレクトホールド(投げ技で、技は正しく展開されたが、相手をデンジャーポジションに追い込めなかった場合)=注・男子フリースタイルは1点
・反則行為があった場合、相手に2点(軽い反則の場合はブレークのみ、重大な反則は即座に失格)
・パーテールポジションでの2度目フライング(攻撃、防御の選手とも、1度目は口頭注意)
・あらゆる警告に対して、相手に2点が入る。

■4点
・相手を投げ、一瞬でもデンジャーポジションの体勢に追い込んだ時

■5点
・グランド状態から大きな投げで一瞬でもデンジャーポジションへ追い込んだ時

下半身へのl攻撃ができないグレコローマンは、胴へのタックル(左)や投げ技で攻撃。テークダウンを取ったらローリング(中)で攻めるのが一般的。4点、5点を狙ってリフト技(右)を狙う場合もある。


8、審判団・チャレンジ

判定に納得がいかない場合は、チャレンジ(ビデオチェック要求)する権利があり。セコンドはスポンジ(手前=形状は大会によって違う)を投げる

(1)審判はマット上で試合をさばくレフェリーのほか、マットサイドの対面にマットチェアマンとジャッジが座り、3審判によって裁かれる。

(2)レフェリーとジャッジの判定が分かれた時は、マットチェアマンが判定に加わり、2人が同意したポイントとなる。

(3)レフリー・ジャッジの判定に間違いがあると思われる場合は、マットチェアマンが両審判員を呼んでコンソルテーション(協議)を行うことができる。

(4)審判団はポイントを決定するためにビデオを使用する事は認められない。

(5)セコンドは1試合に1回、チャレンジ(ビデオ判定)を審判団に対し要請できる。コーナー色のスポンジを投げ入れて要請する。選手の同意が必要で、選手がチャレンジを拒否することもできる(1試合に1回のみ)。

(6)マットチェアマンはチャレンジを確認したら、試合がニュートラル状態であることを確認し、試合を止める。デンジャーポジションの状態では試合を止めない。

(7) 問題の場面のVTRを審判長(インストラクター)、ジュリー(スーパーバイザー)、マットチェアマンの3名が見たうえでポイントを正式に決定する。ポイン トはジュリーが提示し、プラスポイント(チャレンジ失敗の際の1点)はマットチェアマンが提示する。両サイドのセコンドもVTR視聴に加わるが、意見を述 べることはできない。

(8)チャレンジが認められた場合は、得点が修正されたうえで、再度チャレンジ権が認められる。チャレンジが認められない場合は、対戦相手に1点が入り、その試合のチャレンジ権がなくなる。

(9)フォールに関するチャレンジは認められない。男子グレコローマンで脚を使ったなどの反則に対するチャレンジは認められる。

(10)ジュリーは、大会会長、またはその目的のために指名された3名からなる。


9、消極性について

 アグレッシブ(積極的)な闘いを奨励するため、両スタイルとも消極的な闘いにはペナルティーが科せられる。

《男子フリースタイル・女子》

 消極的な選手には30秒間のアクティブタイム(ポイント獲得する時間)が与えられ、この時間内にポイントを取れないと1点を失うとともに、コーション1を科せられる(本ホームページでは「30秒ルール」と表記する)。下記の手順によって行われる。

(1)1回目 試合を止め、口頭注意(アテンション)

(2)2回目 試合を止め、消極的レスラーに30秒間のアクティブタイムを与える。30秒間で両者にポイントがない場合は消極的レスラーにコーションを科し、相手に1点を与える。

(3)第1ピリオドの2分経過時点で両者0-0の場合、審判団はどちらかの選手を消極的レスラーとして摘発しなければならない。摘発されたレスラーは、アクティブタイムを与えられる。

(4)3回目以降の消極性には、すべてアクティブタイムが与えられ、同様の手順が実施される。

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《男子グレコローマン》

パーテールポジション。レフェリーのホイッスルと同時に試合が再開。攻撃側、防御側ともフライングにはペナルティーが科せられる

 消極的な選手にはパシビティー(通称パッシブ)が与えられ、下記の通り、相手に有利な攻撃体勢、またはポイントが与えられる。

(1)1回目 試合を止めずに明確な口頭注意

(2)2回目 試合を止め、消極的な選手にパシビティーを与える。相手はパーテールポジションからの攻撃を選択する権利を得るが、スタンド状態で試合を再開することもできる。

(3)3回目以降 試合を止め、消極的な選手にパシビティーを与える。相手は1点を獲得するとともに、パーテールポジションからの攻撃を選択する権利を得るが、スタンド状態で試合を再開することもできる。

《パッシブとして考える基準》
■反撃無しの攻撃回避。
■相手の手首を握り、攻撃を始めない。
■相手とコンタクトをしないで攻撃する。
■攻撃をした後すぐに、元のポジションに戻る。
■嘘のアタック(シミュレーション)
■ゾーンに逃げ(さがって)留まる。
■センターでコントロールしない。(センターで試合をしない。)
■相手をゾーンに留める。(ゾーンに追い込む。)
■良いポジションにも関わらず、攻撃しない。
■守備的なレスリング。(守ってばかりいる。)
■ネガティブなレスリング
 ・ブロッキング
 ・ヘッドダウン(上半身を起こさない。)
 ・指のロック
 ・スタンドレスリングでオープンを避ける。
 ・相手の胸に頭をつけ続ける。

《パッシーブ対象とならない場合》
■レスラーが多く得点した場合、余りにも防御的にならない限り。
■得点した選手はすぐにはパッシーブ対象にならない。
■リードしている選手に安易にパッシーブを与えない。


10、コーション(警告)

 下記の行為にはコーションが科せられ、3度受けると警告失格になる。同時に、相手には1点、または2点が与えられる。

(1)    反則行為。ただし、軽い反則はブレークのみ、重大な反則は即座に失格

(2)    場外へ逃げた場合(場外逃避)

(3)    男子フリースタイルにおいて、アクティブタイムの時間内にポイントを取れない時

(4)    男子グレコローマンにおいて、下半身を使って相手の技を防御した時(攻撃側が脚を使った場合はブレークとなり、得点なし)

(5)    パーテールポジションで試合が再開する時、フライングをした時(攻撃側、防御側にかかわらず=1回目は口頭注意)


11、反則行為

(1)    パンチ、キック、首を絞める、噛みつく、頭突き、髪の毛をつかむ、皮膚をつねる、手の指をひねる等

(2)    腕を90度以上に極める関節攻撃

その他、安全性を重視したルールとなっている。粗暴行為を繰り返した選手に対しては、「レッドカード」を与える。


 

 

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