金属行人(7月9日付)

 全鉄連構成団体の一つに川口鉄鋼会(会長・矢部三喜男丸喜鋼業社長)がある。去る6月23日と27日に、会の重鎮2氏が相次いで死去した。中村の中村昭会長(享年74歳)と石原商事の石原隆社長(同83歳)だ▼両氏は長い付き合いで紡いだ盟友同士。同時期に鉄鋼会の会長、副会長も務めた。会の永続を願い、両氏が発起人となって次世代の担い手を集め、会への参画意識を醸成するための新組織も立ち上げた▼私的にもよく若手を誘っては一席を設け、業界談義を好んだ。話の内容はもっぱら鋼材加工流通の将来や会の行く末についてだが、説教がましいことはなく、お酒が進んで緊張もほぐれ、舌が流ちょうになった若手の本音をさりげなく探っては自身の立ち居振る舞いのヒントにしていたようだった。けれん味がなく、それでいて度量が大きかった▼22日。自宅療養中の中村氏を見舞い、励ました翌日の夭折には、さすがに石原氏も肩を落とした。その4日後の中村氏の通夜で突然倒れ、そのまま帰らぬ人となった▼「こんなことあるのか」と誰もが驚き、矢部会長は「いっぺんに両腕をもがれた思い」と哀悼した。確かに大きな痛手だが、その遺志を現役がしっかりと継ぐことが、両氏への何よりの供養となるに違いない。

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