大阪北部地震から見たBCP見直しのポイント アンケート結果から読み解く大阪北部地震への対応の課題(最終回)

アンケート調査は、6月22日~29日までの1週間、リスク対策.comのメールマガジン購読者で、今回の地震で震度5弱以上を観測した自治体に何らかの自社施設を有する企業を対象に行い、148の有効回答を得た(全回答173のうち、震度5弱以上を観測した自治体に自社施設がないとした回答などは除いた)。
回答企業は、上場企業と非上場企業がほぼ半数で、企業規模では1000人以上の企業が約6割を占めた。業種別では製造業が35%と最も多く、次いで情報通信業および卸売・小売業(それぞれ13%)、サービス業(9%)と続く。また、今回の地震で震度5弱以上を観測した地域(市町村)にある自社施設は、支社・支店が63%と最も多く、次いで営業所・販売所が30%、本社・本店があるとした回答は22%だった。

 

シリーズで紹介してきた「大阪北部地震に関する企業へのアンケート調査結果」。今回は、アンケートに寄せられた自由回答と、アンケート結果を踏まえたBCP見直しのポイントについて紹介する。

自由回答では、各担当者が直面したさまざまな課題や、システムの不具合なども回答していただいた。

自由回答

【課題】
・勤務中だった社員の自宅被害状況確認のために帰宅要請と、出勤遅延が重なり従業員確保が難しくなった。
・従業員がエレベーターに2時間ほど閉じ込められたが、EV内の備蓄品の携帯電話の充電器がiPhoneに対応していなかった。
・オフィスビルへの入館が制限された
・工場再開の判断ができなかった
・トップが指揮をとらずにBCPが機能しなかった
・緊急停止した電車にどのくらい社員が閉じ込められているのか把握できなかった
・出社させずに帰宅させようとしても通達手段がなかった
・出社途中において帰宅をさせるか判断に苦慮した
・現場と本部との連携、報告ルートが一本化できなかった
・災害情報などを共有してほしいという社員が増えた
・事前に決めていたことに、多くの漏れが見つかった
・対策の中心となる総務が被災して対応が遅れた
・水と食料のほかにガスコンロとボンベを送ったが、ボンベは航空便では送れないので、別便となった(支援物資の管理を見直したい)。
・被害状況の確認で、担当者の回答が遅い。
・ビルの立体駐車場が夕方まで機能しなくなり、社有車利用に影響が出た。
・災害対応にあたる同じ総務部門内でも意識差があった

【改善案】(上記課題の他)
・従業員の社内宿泊の検討
・同様の災害が起きた場合、出社せずに個人の判断で帰宅させるなど出退者判断基準の検討
・被災地社員のタスクリストの見直し
・耐震、什器類の転倒防止、棚からの落下防止
・従業員の防災教育(社員の判断力の醸成)
・マニュアル類の見直し
・対策本部の設置の社員への周知
・安否確認システム・ルールの見直し
・本社―支社間の支援ルールの見直し
・施設への立ち入り判断の検討

大阪府北部地震から見たBCPの見直しポイント例

最後に、今回のアンケートで寄せられた意見などをもとに、BCP見直しのチェック項目(例)をまとめたみた。

【施設面】
□転倒防止、落下防止、施設・塀などの耐震
□エレベーターの対策(地震時管制運転装置の有無、閉じ込め救出方法の確認、訓練)
□エレベーター内の備蓄(数時間を想定。携帯電話に応じた充電用端末なども)
□建物の入館判断基準(建物管理会社との協議。入れない時の対応)
□立体駐車場の見直し(車両の分散管理あるいは駐車場のメンテ会社との連絡体制など)
□自社施設での帰宅困難者の宿泊準備

【初動】
□安否確認のルールの見直し(発動基準、返信ルール、安否以外の連絡)
□社員の出社・帰宅の判断基準とその報告ルール(事業継続方針の見直しと合わせ)
□出社困難時における社員一人ひとりの行動方針(重要顧客への連絡、会社への連絡等)
□緊急連絡網の整備・見直し
□災害情報の収集・共有方法

【対策本部】
□対策本部の設置基準の見直し(設置した情報の共有も含め)
□対策本部設置までの対応方法の見直し(連絡・情報共有などについて)
□関係部門との連絡・情報共有ルールの見直し
□関係機関への連絡・情報共有ルールの見直し
□各責任者や主要メンバーの代替要員の確保
□トップ不在時の代替指揮者の決定
□迅速な対策・対応方針の決定(トップ不在、対策本部要員不参集時も想定)
□被害状況の確認方法(国・自治体から情報が遅れることを想定)
□本社―支店間の連絡ルール・方法の見直し
□本社―支店間の支援ルール・方法の見直し
□支援物資の内容、搬送方法の見直し(ガスボンベなど)

【家庭】
□防災の徹底(耐震、転倒防止、備蓄等)
□家族との安否確認ルール・方法の検討
□移動中などにおける携行備蓄
□学校などの休校時の対応(会社から帰宅できないことも想定)
□家族が通う病院や介護施設の被災時の対応(〃)

 

第1回:BCPの構築レベルによって課題に格差
第2回:BCPを定期的に見直している企業ほど効果を感じた
第3回:「数時間から1日」事業が止まった
第4回:BCPが機能しなかった要因トップ5
第5回:一番役立ったのは安否確認システム

本アンケート結果は、下記よりダウンロード可能。
https://www.risktaisaku.com/articles/-/7384

(了)

<本調査結果のサマリーは、7月10日より無料ダウンロードいただけるよう準備を進めております。また8月上旬には今回の地震に関するセミナーを開催する予定です>

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