長崎県は工事粛々 石木ダム訴訟判決

 石木ダム建設を巡っては、長崎県は強制的に家屋を撤去などする行政代執行を可能にする手続きを進めている。今回、司法のお墨付きをもらい、長崎県は工事を粛々と進めていく構えだ。一方で、住民の家屋をこれほど大規模に行政代執行してダム建設をすれば全国的にも異例。原告側は控訴する方針で、今後の展開には曲折も予想される。
 長崎県によると、反対地権者13世帯のうち、4世帯の農地約5500平方メートルは既に国に所有権が移った。県はダム本体工事に入るため、付け替え道路の工事に着手しており、「年度内に本体工事着工のめどをつけたい」(担当課)考えだ。
 ダム供用には原告13世帯の立ち退きが不可欠。13世帯の家屋を含む約12万平方メートルについて、長崎県と佐世保市の裁決申請を受けた県収用委は、強制収用する際の補償額などの審理をほぼ終えている。県収用委の判断の時期が近づいているとの見方がある。
 事業を進めていく鍵となる強制収用だが、県収用委の裁決を受けて、実際に行政代執行した例は少ない。1998年度~2017年度、県が裁決申請をしたのは76件。うち実際に収用したのは2件で、強制的に家屋取り壊しに至った例はない。
 全国的に見ても、13世帯もの家屋を強制的に取り壊すことになれば、国土交通省が事業認定をしたダム事業の中で「これまでなかっただろう」と同省担当者は言う。「新東京国際空港公団20年のあゆみ」(同公団発行)によると、激しい反対運動が起きた成田闘争でも、行政代執行した住民の家屋は1軒だけだった。石木ダム事業で行政代執行すれば異例となるだけに、長崎県は慎重な判断を迫られそうだ。

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