
世界ボクシング機構(WBO)スーパーフェザー級2位の伊藤雅雪(伴流)が日本時間7月29日、米国フロリダ州キシミーで同級1位クリストファー・ディアス(プエルトリコ)とWBO王座決定戦で対戦する。
この王座はスーパースターの域に達したワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が返上したタイトル。果たして伊藤は注目されるベルトを手にすることができるのか。劣勢が予想される中、捨て身のアタックが期待される。
WBOアジアパシフィック王者の伊藤は3月、世界前哨戦ともいえる10回戦でフィリピン選手を相手に9回TKO勝ちを収めた。
序盤から一方的に攻めながら決め手に欠いた感はある。それでもカウンターで優位に立ち、成長の跡を見せた。
戦績を23勝(12KO)1敗1分けとした27歳は「今日は単発なパンチが目立ち、小手先で打っていた。強い世界王者になるのが夢です」と前向きな言葉を口にした。
完勝でも決して満足していない。自分に高いハードルを課すのが伊藤の持ち味でもある。
気を引き締めるのも当然だろう。相手のディアスは23歳のボクサーファイターで、デビュー以来23連勝(15KO)と不敗を続けている。
好戦的なスタイルで、特にボディーブローを得意とする。KOのチャンスには一気にたたみ込む迫力も十分。「日本のボクシングはレベルが高いと聞いている。でもタイトルは奪う」と自信満々のようだ。
伊藤はアマチュア経験がなく、高校にはバスケットボールで推薦入学した。
駒大に進む直前に以前から関心のあったボクシングに目覚め、2009年にプロデビュー。優れた運動神経の持ち主で、スピードのある連打には豊かな将来性が感じられた。
15年に東洋太平洋王座を獲得。一歩ずつ世界に近づいてきた。
所属する伴流ジムにとっては、1997年のジム創設以来、初の世界戦。団太路会長は「伊藤は若いころから才能があった。自分のジムから世界的な選手が生まれるとは…」と驚きを隠さない。
スーパーフェザー級といえば日本にとってお家芸のクラスである。古くは沼田義明、小林弘、柴田国明らが世界王座に就き、近年では破格のパンチャー、内山高志が存在感を示していた。
伝統の階級でバトンを受け継ぐことができるのか。伊藤は「ここまできたらやるしかない。手数で勝負する」と決意を述べた。(津江章二)