【新潟地区、鉄骨業界の展望と課題】〈新潟県鉄骨工業組合・渡邊孝夫理事長に聞く〉仕事量、今年一杯は旺盛 経営安定へ正確な情報共有を

 新潟県内の鉄骨ファブリケーターは、Sグレードからノングレードに至るまで非常に繁忙な状態だ。この局面を乗り越えながら、人手不足や働き方改革など、一見〝相反する〟業界の課題に取り組むことが組合に課された役割でもある。渡邊孝夫新潟県鉄骨工業組合理事長(渡辺鉄工相談役)に今後の展望を聞いた。(杉原 英文)

――2017年度を振り返って。

 「県内の地場物件は期待ほど多くなかったが、首都圏を中心に受注するファブは山積み(受注残)が高く、同業者が手伝うことである程度仕事が広まり、波及効果が見られた。後半は県内の小物件(50トン以下)が意外と出件され、全体としては100%の稼働率で推移した。振り返ると落ち着いた良い1年だった印象だ」

――18年度見通しは。

新潟県鉄骨工業組合・渡邊理事長

 「受注が旺盛で県内、首都圏向けとも17年の後半以降、相当な量が出ており、6月時点で各ファブが自社の加工能力だけでは間に合わない。19年度前半までこの動きで受注は推移するだろう。S級は来年から再来年まで、H級は来年前半から来年後半まで、M級は県内、県外とも年内はある程度埋まる。R級は3カ月強の仕事量を確保している」

 「全体では今年一杯は十分見込める雰囲気。首都圏では来年度前半まで。来年度後半以降は少しずつ需要減少していくとみている。来春は雪解け後持ち直し、秋口にどれほど出るかは不明だが、なだらかな減少と予測。さほど心配していない。皆さん慌てず、騒がす、情報をきちんと仕入れて今後の取り組みをしていただければ」

――経営環境の改善につながる共同積算は。

 「組合が正確な積算をしていると県、市、ゼネコン含め評価をいただいている。今後も積算レベルの向上を継続的に行い、皆様の要望に応えて行ければ安定的な事業の確立はやっていけるだろう」

 「各社の経営合理化の意味では組合員が積算の重量が上がってくるまで、じっくり図面を見て自社の適正価格の割り出しを先に行える。積算重量が出た時に、自社の適正単価を入れ込んでいけば良い。組合としては皆さんの経営合理化に一役買っている自負がある」

 「見積もりすべき物件は非常に多い。受注率を考えると、共同積算を活用し良い積算ができるようにしていきたい」

――交流の意義。

 「省力化に貢献する最新設備の情報共有、組合だからこそできる各社のアイデアを一元化、共有化し皆さんと一緒に勉強会を開催し、自社に合ったようなものを、フィードバックできるような活動を行っていきたい」

――経営安定化のためには。

 「常に情報を多く仕入れてもらい、正確に分析し、仮に間違った情報を得た場合でも判断を間違わないよう県、支部で実務者同士の会議、懇親会、研修会の中で正しい情報を得て、同業者との親交を深めていくことで助け合いの精神が強くなる。その後押しをしていきたい」

 「我々、鉄骨製作を生業にしている同業者が同じ知識、情報を共有することが業界の発展につながると思っている。継続的に推進していきたい」

――鉄骨業界のさまざまな課題は。

 「鋼材、とび、運送、副資材に至るまで価格が上昇している各業種の大きな流れと今年どう動くのか短期的動向の両方を掴みながら、我々の鉄骨価格に反映していくことが非常に重要。アンテナを高くしていきたい」

 「少子高齢者が顕著に進行している業界。1社単位ですべてを行うことがどこかで無理がくる。隙間を埋める協力体制の構築を目指し、地域性を基に確立していければ業界が変わる。各支部内で継続的にコミュニケーションの場を作っていただきたい。最終的には新たな業界の形へ。単体から複数体で補っていけるよう、共存できる業界にしていきたい」

――働き方について。

 「仕事と生活の調和の充実が肝。各社トップが足並みそろえて行けるシステムを作りたい。社員のために作って行きたい。希望を持って就職していただけるためにはこの部分が大事だ」

――後継者育成、青年部の活動は。

 「10年先を見据え地域性や会社に合った独自性を持った事業に取り組んで欲しい。相手にないものがあるからこそ、補いあうことで仲よくできる。必ず約束は守る。仲間同士のルールを守ることで〝信用〟がついてくる。そこがきちんとできれば次世代の経営者同士、新しいネットワークが築ける」

 「今、鉄骨業は大きな変革期。設備、CADソフトしかり。昔のリーダーが誇りを持っていたように、ものづくりのやり方が変わった中でも若手経営者も誇りを持って行動してほしい。10年後の鉄骨業界に希望を持っている」

――人手不足について。

 「外国人技能実習生の受け入れしかり、老若男女全ての働き手をターゲットにしていかなければ。鉄骨業への認知度向上、興味を引くPRを組合が自分達でできることを推進していきたい」

――鉄骨業のあり方。

 「我々の世界は足るを知る気持ちが経営者自身も、会社という法人にも必要だ。それが余裕につながり教育、安全につながり、会社の人材、設備も満足できる状態で動いていけると思う。独り勝ちはない。厳しくなる時代、皆で連携し、きちんと適正価格で仕事ができる業界になれば鉄骨業の地位確立ができると思う」

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