「ケイスケホンダの継承者になる」元アトレティコ宮川類 スペインへ再挑戦

かつてスペインの名門、アトレティコ・マドリードの下部組織に所属した日本人選手がいる。彼の名前は宮川類。今夏、慶應義塾大学体育会ソッカー部を退部した21歳が再びスペインへ挑戦する。今回はそんな宮川類選手のスペイン再挑戦に迫る。

アトレティコ下部組織入団のきっかけはクラブワールドカップ

―まずはサッカーを始めたきっかけを教えてください。

親戚が地元、山梨にあるトラベッソというチームの監督をやっていて3歳から始めました。

―トラベッソはどんなクラブでしたか?

「世界で活躍できる選手を育成する」というコンセプトのクラブでした。監督の秋山さんには今でもとてもお世話になっています。

―小学5年生でアトレティコ・マドリードの下部組織に入団した経緯を教えてください。

2007年のクラブワールドカップでバルセロナが来日して、その試合を見に行ったんです。その時に

ロナウジーニョのプレーに衝撃を受けて「自分もスペインでプレー」したいと思うようになったんです。それから、アトレティコがサマーキャンプを実施していることを知り、参加しました。キャンプには日本からは自分を含めて2人、あとは外国の選手でした。当初は、1ヶ月間だけしか留学するつもりはありませんでした。しかしサマーキャンプが終わった後、アトレティコの下部組織からスカウトされ、300人中3人しか選ばれなかったのですがその中の1人に選ばれたのがきっかけです。

日本とスペインの下部組織の違い

―Jリーグの下部組織と欧州クラブの下部組織では何が違いますか?

選手の入れ替わりです。Jリーグの下部組織は一度入ると小学校や中学校を卒業するまで、基本的には在籍できます。しかし、アトレティコはもちろん、海外クラブの下部組織は選手の入れ替わりが普通にあります。能力の低い選手は残念ながらプロ選手でいう戦力外となってしまいます。

僕がアトレティコにいた時も1年で半分くらいの選手がいなくなりました。

―アトレティコで通用した部分、足りないと感じた部分を教えてください。

ドリブルは通用したと思います。日本にいる時在籍していたトラベッソが個の育成に力を入れていたので、それが生きていたと思います。ただ、勝負強さや決定力はスペイン人に劣っていると感じました。

アトレティコを去ることに そして日本に帰国し、強豪校でプレー

高校時代の宮川選手

―アトレティコを去り、日本に帰ることになった時の心境を教えてください。

やはりとても悔しかったですね。アトレティコで昇格できず、半年くらい他のクラブでプレーすることになったのですが、「自分はこのままでプロになれるのか?」と思いが頭をよぎり、「日本に帰って鍛えなおしたい」と思って日本に帰る決断をしました。

―日本では千葉の超名門校流通経済大学付属柏高校に進学されてますが、その経緯は?

トラベッソの監督と流経柏の本田監督が面識があって、編入することに決めました。

―流経大柏高校のレベルはどう感じましたか?

超強豪校と言われるだけあって、とてもレベルは高かったですね。流経時代は先輩にのちにJリーガーとなった小泉慶選手や青木亮太選手もいて、次元が違いましたね。正直、市立船橋や東福岡、青森山田などの高円宮杯でプレミアリーグに所属する高校以外はあまり強いと思わないくらいでした。

―どんな高校生活を送りましたか?

平日は朝6時半から朝練があって、その後8時半から授業があり、3時前くらいから夜7時過ぎくらいまでまた練習でした。土日ももちろん、練習試合や公式戦で月曜日にオフはありましたが、自主練をしてましたし、寮生活だったので、本当に部活漬けの日々でしたね。ただ、苦労した時期もありましたが、3年生でトップチームの試合に出場し、ゴールも決めれたことは良かったと思います。

慶應義塾大学に進学し、ソッカー部に入部

―半年間浪人して、慶應義塾大学に進学していますが、その心境を教えてください。

プロになれる最後のチャンスという思いとセカンドキャリアや将来のことを考えて、慶應義塾大学に進学しました。この大学4年間で結果を出せなければ、サッカーをあきらめても良いと思っていました。

―慶應時代は苦しい時期がありながらもトップチームで試合にも出場していましたね。

はい。流経や慶應といった、日本でもとてもレベルの高い環境でプレーし、トップチームでも試合に出場したこともあって、それ相応の技術は備わっていると思いますし、自信にもなりました。

慶應ソッカー部を退部して再びスペインへ挑戦

慶應ソッカー部でプレーする宮川選手

慶應ソッカー部で失敗したようには見えませんが、なぜスペインに再挑戦を決めたのですか?

―日本の高いレベルでプレーしましたが、やはりスペインでサッカー人生を終えたいと思いました。

そして、やはりアトレティコでの悔しさや、「もう一度アトレティコに戻りたい」という思いもあります。まずは、スペインの3部や4部のクラブに入って、徐々にステップアップしたいです。

―スペイン再挑戦のためクラウドファンディングを実施していますが、その理由を教えてください。

今回、クラウドファンディングを実施して賛否両論の様々な意見がありました。「アルバイトをしろ」といった意見もありました。たしかに言ってることは間違ってないと思います。しかし、人から集めたお金だからこそ、「色んな人の思い」が乗っかり、価値があるとも思っています。

今回、141万円集まりましたが、アルバイトをして同じ141万を稼いでもでもその価値は全然違うと思います。

―賛否両論のクラウドファンディングを終えて、感想を教えてください。

最初に感じたのは、「人の温かさ」です。予想していた以上に多くの方に応援してもらえてすごいうれしかったです。同時に、「結果を出さなくては」と自分にも言い聞かせていて、自分のためによりも「応援してくれる方のため」と思っています。そして、何より応援してくれる多くの方に感謝しています。

―スペインに再度挑戦するに当たっての不安はありますか?

サッカー面に関しての不安はない。チームを決めないといけないし、生活面のこともあるけどなんとかなると思っています。Jリーガーになれない選手が海外でプロになるのは普通に考えたらムチャかもしれない。けど根拠のない自信があります。

―アピールしたい武器はありますか?

積極的な仕掛けです。私はボールを持ったら、かなりの高確率でドリブルで仕掛けます。ここは他の日本人選手ではあまりいないと思います。それが世界で通用するか否かでクラブと契約できるかどうかに大きく関わってくると思います。

―スペイン以外の国でプレーすることは考えていますか?

考えていません。スペインじゃなきゃ意味がないとも思っています。

目標の選手はもちろん、ケイスケホンダ

―では、目標の選手を教えてください。

―本田圭佑選手です。本田選手は考え方が普通の人とは違いますし発想が凄いと思います。プレースタイルも自分と似ている部分もあると思います。「いるだけでなんとかしてくれる」そんな選手に自分もなりたいと思っています。

―本田圭佑選手を超えるために必要なことは何だと思いますか?

努力はもちろんですが、運、縁もあります。彼を超えるのは、簡単ではないと思いますが、いつか超えたい、継承者になりたいと思います。

―ロシアワールドカップでの本田選手のプレーを見てどう思いましたか?

「走れない」とか「必要ない」とか言われてますが、決して僕はそうは思いません。3大会連続でゴールを決めていますし、アシストも記録して結果を出しています。そして、いるだけでチームに良い影響を与えてくれる選手です。サッカーを知っている人であれば、本田選手の影響力の大きさや凄さは分かるのではないかと思います。

―本日はありがとうございました。スペインへの再挑戦頑張ってください。応援しています。

―ありがとうございました。頑張ります!

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