【高校野球】「とんでもない選手に」― 超一流のフィジカル誇る西日本短大付のドラフト候補

西日本短大付の中村宜聖外野手【写真:加来慶祐】

西日本短大付の中村宜聖が初戦で見せた存在感「持ち味は出せたかな」

 入学時から雑誌や新聞、ネット上で何度も「走攻守に優れた福岡のドラフト候補」として取り上げられ続けている西日本短大付の中村宜聖外野手。今回初戦となった10日の福岡第一戦は3打数1安打、打点ゼロに終わったが、逸材としての存在感は発揮した。

 この日、唯一のヒットとなった6回の二塁打である。右翼線に落ちた打球に対し、一度は一塁手前でトップスピードを解除したものの、右翼手の捕球姿勢とそこから反転して放たれる送球の強さを予測し、一塁を回り込んだ地点から再加速を開始。瞬時にトップギアに入り、悠々と二塁を陥れた場面だ。

「それまで打席で突っ込むなど思うような結果が残せていなかったのと、あと1点で試合が終わることは分かっていたので、気持ちを込めて先の塁を狙いました。持ち味は出せたかなと思います」

 183センチ、80キロというサイズで50メートルを5秒9で駆ける健脚の持ち主。通算14本塁打のパンチ力も魅力だが、指導する西村慎太郎監督が「陸上の短距離に進んでいたとしても充分にトップを張れる速さと身体能力」と太鼓判を押すスピードこそが中村のストロングポイントだ。結局、中村は10点目のホームを踏み、チームは0-10という大勝で6回コールド発進を果たしたのだった。

監督は絶賛「父親に似て頭の回転が良いし、野球の基礎もしっかりしている」

 父は1992年の夏に甲子園を制した西日本短大付の主将だった中村壽博氏である。早大でも大学日本代表に選出されるなど活躍し、監督としても2003年に日本文理大を九州勢初の全日本大学野球選手権優勝に導いたアマチュア球界屈指の野球人だ。しかし、親子間で野球の技術に関する会話はほぼなく育ったという。

「父は感性を重視する人なので、自分が悩んでいる時も『練習をしていく中で感性を磨きながら、感覚のズレを解消していくしかない』と、技術についていろいろと言われたことがないんです」

 それでも父のことはリスペクトしてやまない。甲子園の決勝戦と東京六大学リーグで首位打者を競った絶頂期の映像は、大分市の実家で何度チェックしてきたかはわからない。

「父親に似て頭の回転が良いし、野球の基礎もしっかりしている。ただ、頭の中に描いているイメージどおりに、まだまだ使いこなせていないはず。それができればとんでもない選手になりますよ」

 西村監督はこう言う。この後の南福岡大会の中で超一流のフィジカルと父親譲りの感性をマッチングさせながら、中村はさらに進化を続けていくに違いない。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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