スズメの少子化

 足元でチイチイと激しい鳴き声がした。見るとくちばしの黄色いスズメのひなが路上の縁石に止まっている。歩行者にあおられて不安定に飛び、今度は信号待ちの車の上に止まった▲信号が青になって発進した車の上から、落ちるように飛んで車道の向こうに消えたひな。巣立ちしたばかりでまだ上手に羽ばたけないんだね。小さな命の不安な気持ちが伝わってくる▲「スズメの少子化、カラスのいじめ」の著者、安西英明さんによると、巣立ったスズメのうち翌年春まで生き延びるものは、1割いるかいないかだそうだ。タカなどの捕食者がいる。飢えることもある▲そんなスズメの世界でも少子化が進んでいると安西さんは書く。かつて4~5羽のひなを連れたスズメは珍しくなかったが、都市部や住宅地では今や、2~3羽や1羽のことも少なくないとか。人家に好んで巣作りするスズメが十分な空間を確保できず、卵やひなの数が減っている可能性を指摘している▲巣作りに向いている瓦屋根のある家が減っているのかもしれない。そういえば、信号機のパイプの中に巣作りしているスズメを見たことがある▲スズメも人間同様、住宅事情に悩みながら子育てをしているのかな。そう考えると、厳しい環境へ巣立っていく小さな命が、一層いとおしく感じられる。(泉)

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