相模原の自転車条例効果上々 保険加入義務化で申し込み者急増

 12日に初公判が行われた川崎での事故のように、誰にでも起こりうる自転車による重大事故。加害者が多額の損害賠償を求められるケースが相次ぐ中、自転車事故に備えた保険への加入を義務付ける動きが進んでいる。相模原市は昨年12月に施行された自転車条例に基づき今年7月から保険加入が義務化され、加入する市民が増加。県内初の試みは効果を上げつつある。

 「条例の効果で自転車の安全に対する市民の意識が高まっています」。同市南区の自転車販売店の店主(67)は笑顔を見せる。

 自転車安全整備店に登録している店舗で年に1度点検を受けると「TSマーク付帯保険」(賠償責任補償で限度額は1億円)に加入できることから、6月下旬から点検を申し込む人が増えた。費用は各店で異なるが、この店では2千円で請け負う。店主は「点検を受けて保険に加入し、安心、安全に自転車に乗ってほしい」と期待する。

 保険加入義務化の対象は、市外在住者を含め「市内で自転車を利用する人」と「市内で自転車を利用する未成年者の保護者」。罰則はなく、交通ルールやマナー順守、子どもや高齢者のヘルメット着用も求めている。自転車小売業者には購入者に保険の加入有無の確認を求めている。

 市はTSマークを含め九つの保険をホームページなどで紹介。損害保険各社は年間千~数千円の掛け金で、1億円程度の損害賠償について補償を受けられるプランを用意している。市がチラシ配布などで条例を周知した結果、大手の「損保ジャパン日本興亜」では6月以降、市民から自転車保険の申し込みが増加。7月の加入件数は4、5月に比べて10倍近くを見込む。

 条例制定の背景には、神戸市で自転車の小学5年生が60代女性と衝突した2008年の事故がある。女性は寝たきりの状態となり、神戸地裁は小学生の母親に損害賠償約9500万円の支払いを命じた。昨年には今回の川崎の死亡事故が発生。この事故では、被告の父親が損害賠償責任保険に加入していたため、遺族への補償に対応できているという。保険加入の重要性や自転車事故が増す中で県も条例化を検討している。

 相模原市南区で自転車店を営む県自転車商協同組合の矢島定昭理事長は、「誰もが被害者にも加害者にもなる可能性がある。まだ条例を知らない人が多く市民への周知が必要だが、条例は保険加入を呼び掛ける上で大きな後押しになる」と話している。

平坦地が多く自転車が利用しやすい相模原市内

© 株式会社神奈川新聞社