酷暑日

 「荒城の月」を作詞した土井晩翠が大正の終わり頃の1923年、随筆に書いている。〈人も、我も、この酷暑にはほとほと弱り切っている〉。いつの時代も猛烈な暑さは人を弱らせ、げんなりさせる▲そうだとしても、大正期にこれほど暑い日が、しかも毎年のようにやってきたろうか。4日前、島原と南島原市口之津で気温35度以上に達し、県内で今年初めての猛暑日となった▲九州北部が梅雨明けしたのはその前の日で、夏本番を迎えたばかりなのに、真夏日(気温30度以上)を飛び越しての猛暑日の到来だった。「今年も来たよ」。猛々(たけだけ)しい暑気がそう言いながら近寄ってきたようでもある▲うだるような暑さだった昨年を思い出す。7月末から県内あちらこちらで猛暑日が続いた。8月4日には大村と佐世保で37・9度に上り、その日の全国最高気温を記録した。今年はまだ7月半ば。ああ、先が思いやられる▲きょうから3連休という人も多い。この3日間も予報では「晴れ」、気温も全国でぐんぐん上がるらしい。西日本豪雨の被災地も例外ではない▲避難所で過ごすにも、捜索や復旧の作業に当たるにも、耐え難い暑さに違いない。酷(ひど)い目に遭った人々に追い打ちをかけるような、酷な暑気が続く。気象用語には見られない「酷暑日」をどうにか超えたい。(徹)

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