【あなたは何しに?】ハミルトンから勇気をもらって、義足でレースに復帰した少年

 F1シーズンを転戦していると、いろいろな人との出会いがある。そんな人たちに、「あなたは何しに?」と尋ねる連載企画。今回は昨年に引き続きイギリスGPに招待されたF3ドライバーのビリー・モンガーだ。
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 2017年のフォーミュラ4のレース中、クラッシュにより両脚を失ったビリー・モンガーがF1のイギリスGPを訪れた。

 モンガーは昨年もルイス・ハミルトンの招待を受け、メルセデスのゲストとしてイギリスGPを訪問していた。そのレースでハミルトンがポール・トゥ・ウィン。勇気をもらったモンガーは、その後レースへの復帰を決意。手でアクセルとシフトチェンジ、義足でブレーキを踏むことができるように改良されたマシンでテストを行い、レースへの復帰を目指していた。

 そして、今年のイギリスF3選手権の開幕戦では、約1年ぶりにレース復帰を果たし、見事3位表彰台を獲得した。

 そのモンガーが今年もイギリスGPを訪れた。昨年は車イスでの訪問だったが、今年は義足をはめて、パドックを歩き回っていたのが印象的だった。

 モンガーにとって、今年のイギリスGP訪問は支えてくれた人たちへの感謝の念が込められていた。自分が元気に暮らしている姿を見せることで、恩返ししたい――そんなモンガーにピレリが大役を与えた。それは、ポールポジションを獲得したドライバーに与えられるピレリ・アワードのプレゼンター役だった。

 土曜日の予選前に、ビレりのモーターホームに招待されたモンガーはピレリの広報(P2630408.JPG/右)から段取りの説明を受けると、マリオ・イゾラ(ヘッド・オブ・カーレーシング)とともに、カメラに収まる予行練習をしていた。

 予選前に「だれにこの賞を渡したいか?」と尋ねると、モンガーは迷わず「ルイス(・ハミルトン)」と即答。その1時間後に開始されたイギリスGPの予選で見事ポールポジションを獲得したのは、ハミルトンだった。

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