フォーミュラE:アウディが2点差で新チーム王者に。シリーズ最終戦は新王者ベルニュが制す

 2017/18年のABBフォーミュラE選手権は7月15日、アメリカ・ニューヨークでシーズン最終戦の第12戦が行われ、前日の第11戦で今季のチャンピオンを獲得したジャン-エリック・ベルニュ(テチーター)が優勝を飾った。チームチャンピオン争いはこの週末で33ポイント差の逆転に成功したアウディスポーツ・アプト・シェフラーに軍配が上がっている。

 この週末はダブルヘッダーとして開催されているフォーミュラEニューヨークE-Prix。14日の第11戦では予選最後尾からスタートしたベルニュが5位入賞を果たし、最終戦を待たずしてシリーズチャンピオンを獲得している。

 チームタイトル争いについてはベルニュ、アンドレ・ロッテラー擁するテチーターとルーカス・ディ・グラッシ、ダニエル・アプト擁するアウディスポーツ・アプト・シェフラーの一騎打ちで最終戦を迎えた。

 決勝前の予選では、第11戦でもポールポジションを獲得しているセバスチャン・ブエミ(ルノー・e.ダムス)が1分17秒973で最速。2戦連続のポールを獲得した。

 2番手はロッテラー、3番手はベルニュが獲得し、チームチャンピオンを争うアウディスポーツのアプト、ディ・グラッシが4〜5番手スタートだ。

3番手スタートのベルニュはスタートでトップに浮上。そのまま逃げ切った

 43周で争われた決勝ではベルニュがロケットスタートをみせてトップに浮上。2番手にはブエミ、3番手にはロッテラーが続く。ただし、テチーターの2台はジャンプスタートの疑いがかけられ、審議が行われることに。

 3番手のロッテラーは5周目にブエミを攻略して2番手に浮上。テチーターがワン・ツー体制を築いていく。

 その後方ではホセ・マリア・ロペス(ドラゴンスピード)がマシンの右リヤを損傷してしまい、コース上でマシンをストップしたため、レースは8周目にフルコースイエローに。

 すると、そのフルコースイエロー導入直前にアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(MS&ADアンドレッティ・フォーミュラE)をオーバーテイクしようとブレーキングでインに飛び込んだルカ・フィリッピ(NIOフォーミュラE)が接触。

 これでフロントウイングを壊したフィリッピはバランスを崩し、アウト側を走っていたジェローム・ダンブロジオ(NIOフォーミュラE)に衝突してしまう。フィリッピは走行を続けたものの、ダンブロジオは走行続行は叶わずリタイア。レース序盤にドラゴンスピードの2台が姿を消してしまった。

 フルコースイエロー中の9周目、ロッテラーにジャンプスタートの裁定が下り、10秒ストップペナルティ。一方、ベルニュは審議の結果ジャンプスタートはなしとの裁定が下された。

 レースは11周目に再開。このタイミングでロッテラーはペナルティを消化するべくピットへ。暫定15番手でコースに復帰した。

 12周目には3番手のディ・グラッシが前を走るブエミを捉えて2番手に。前を走るベルニュを追っていくが、ベルニュは約1秒のマージンを維持し続ける。

 20周目、11コーナーへの飛び込みでアプトがブエミを攻略。アウディ勢が2〜3番手となり、チームチャンピオン獲得に王手をかける。

 23〜24周目には、今シーズン限りで見納めとなるレース中のマシン乗り換えのために各ドライバーが続々とピットイン。しかし、ここでトップ4の順位は入れ替わらず、ベルニュ、ディ・グラッシ、アプト、ブエミのままレースは後半戦を迎える。

 レース残り10周を切ってきたタイミングで、2番手ディ・グラッシがトップを走るベルニュにじわじわと接近。35周目に2台はテール・トゥー・ノーズのバトルへと発展した。

第11戦でチャンピオンを決めたベルニュが最終戦を制してみせた

 しかし、ストレートスピードでアドバンテージがあるベルニュはディ・グラッシの猛攻を防ぎきってトップチェッカー。新チャンピオンが王者の貫禄をみせつけた。

 チームメイトのロッテラーはレース残り2周でステファン・サラザン(MS&ADアンドレッティ)を交わして10番手に浮上すると、その翌周にはサム・バード(マヒンドラ・レーシング)を交わして9番手にポジションを上げる。

 この時点で、2〜3位にディ・グラッシ、アプトを送り込んだアウディスポーツとテチーターはポイントランキングで同点となるが、レース中の暫定ファステストラップを記録しているアプトにはボーナスポイントが加えられるため、アウディスポーツが2ポイント差で逆転戴冠を果たす計算だ。そのため、勝負の行方は最終ラップでロッテラーがファステストを塗り替えられるかにかかった。

チームチャンピオン争いの鍵をにぎることになったアンドレ・ロッテラー(テチーター)

 集団のなかでの走行を強いられたロッテラーはレース残り2周の時点でファステストからコンマ2秒遅れのタイムを刻んだものの、これが精一杯。最終ラップでのファステスト更新はならず、アウディスポーツが逆転でのチームチャンピオン獲得を成し遂げた。

 レース後、チームの指揮を執るアラン・マクニッシュは「昨日(の第11戦で)、ワン・ツーフィニッシュを飾るまで、我々がチームチャンピオンになれるとは思いもしなかった。信じられない結果だよ」と喜びを語った。

 第4シーズンにあたる2017/18年のフォーミュラEはこれで閉幕。シリーズ初年度から使用されてきた共通シャシー、SRT_01Eでのバトルも見納めとなった。

 攻撃的なスタイリングが特徴の第2世代マシン、通称“Gen2”が登場し、新たにニッサンもワークス参戦を開始する第5シーズンは12月15日、サウジアラビアで開幕を迎える。

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