カナダ・トロントで開催されたインディカー・シリーズ第12戦。15日に行われた決勝レースは、ポイントリーダーのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)がミスのない走りを見せ今季3勝目を挙げた。佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン)は、表彰台を争うもクラッシュを喫しリタイアとなった。
雨に見舞われた予選で見事なアタックを見せ、今シーズン4回目のポールポジションを獲得したジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)は、スタートから最初のピットストップまでトップを守り続けたものの、リスタートでの加速を焦ってミスを冒した。
メインストレートへと出る最終コーナーでクラッシュを演じたのだ。不幸中の幸いはリタイアを免れたこと。粘りを見せて9位でゴールしたのはさすがだが、後々まで後悔するであろうレースとなった。
33周目に切られたリスタート。ニューガーデンは彼にプレッシャーをかけ続けていたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)の影に怯え、最終コーナーの通過スピードを必要以上に上げた。その結果、僅かにラインが膨らみ、タイヤかすを拾ってクラッシュしてしまった。
照れ隠しもあるのだろう。ニューガーデンは、「なぜ壁にぶつかったのか正直わからない」とコメントしていた。しかし、彼がコース上の埃か、タイヤのかすに乗ってしまったのは間違いない。
すぐ後ろで一部始終を見ていたディクソンは、「ストレートへ出るコーナーの通過スピードを上げ過ぎ、ラインが膨らんだからタイヤかすを拾ってクラッシュした」と一刀両断していた。
予選2番手からそのポジションを守っていたディクソンは、相手のミスで楽々トップに立ち、その後は危なげのない走りでゴールまで悠々と走り続けた。
予選4番手だったウィル・パワーは他車との接触からサスペンションにトラブルを出して後退。ディクソンの後ろの2位でゴールしたのは予選3番手だったシモン・パジェノーだった。
彼はレース終盤にロバート・ウィケンス(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)と競り合い、接触するシーンもあったが2位を守り通した。ただ、ディクソンにアタックすることはついに最後までできなかった。
「もう体力は残っていない。肉体的に厳しいレースで、勝てて嬉しい。滑りやすい路面でのリスタートは難しかったが、トップに立ってからは後続を突き放せた。この調子でポイントを伸ばしていきたい」とディクソンは喜んでいた。
ニューガーデンに並ぶ今シーズン3勝目。トロントでの3勝目はキャリア通算44勝目。5回目のタイトル獲得がなるかもしれない。そう考えさせる戦いぶりだった。
アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)は序盤にウィル・パワー(チーム・ペンスキー)に追突し、フロントウイングを壊し、8位でゴール。ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)はブレーキが不調でロックすることが多く、ターン3でクラッシュしたため16位。
ディクソン以外のポイント上位ドライバーたちは結果が悪く、ポイントリーダーが差を広げることになった。彼のシリーズポイントは464点となり、ニューガーデンとの差は33点から62点まで広がった。ランキング3位のロッシはディクソンとの差が41点から70点に広がった。そしてハンター-レイはディクソンとのポイント差が91点となった。
今年のレースには3人のカナダ人ドライバーが出場。その中からロバート・ウィケンスが3位に入賞した。ルーキー・シーズンながら3回目の表彰台だ。そして、先週アイオワで優勝したばかりのジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)が4位でゴールした。
琢磨は予選7番手から3番手までポジションを上げる好レースを戦っていたが、ニューガーデンと同じく最終コーナーの壁にヒット。サスペンションが壊れてリタイアした。マルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・ハータ・オートスポート)の後ろの5番手を走っていた時のことだ。
ニューガーデンがクラッシュした直後、琢磨はバトルの中でヒンチンチクリフに後方からヒットされ、その辺りからマシンが完璧ではなくなった。パジェノーをスタートでパスし、彼を上回るスピードを見せていただけに2位フィニッシュも可能と思われたが、悔しい結果となった。