中学道徳教科書採択へ 19年度教科化、18日から県内各教委

 2019年度から教科化される中学校道徳の教科書採択が18日から、鎌倉市を皮切りに、神奈川県内各市町村教育委員会で始まる。文部科学省は「考え、議論する道徳」として特定の価値観を押し付けない考えだが、教育関係者は「法や決まりの順守を過度に徹底させることで、物言わぬ従順さだけを植え付けることにならないか」と危機感を募らせている。

 教科化は、11年の大津市いじめ自殺事件を受けて、安倍晋三首相直属の「教育再生実行会議」が13年に提言して実現した。学習指導要領に定められている「節制」「順法精神」「国を愛する態度」といった22の項目に沿って教科書は作られ、今春の検定で(1)東京書籍(2)学校図書(3)教育出版(4)光村図書出版(5)日本文教出版(6)学研教育みらい(7)廣済堂あかつき(8)日本教科書-の8社が合格した。

 新規参入の日本教科書は、保守色が強い育鵬社の歴史・公民教科書を中心になって作成している八木秀次・麗澤大教授らによって立ち上げられた。設立経緯や教科書の内容を巡り市民団体が批判を強めている。

 戦前には道徳に相当する「修身」で教育勅語が教えられ、軍国主義の礎になった。戦後は1958年の学習指導要領改定で「道徳の時間」が導入され、文科省作成の副読本などが配布されてきた。

 教科化で教科書の使用が義務付けられ、記述式の評価も導入される。授業時間数は現行と同じ週1時間。

 18年度から教科化された小学校では、進学先の中学校に送る資料として法令で作成が義務付けられている「指導要録」に評価を記入する。だが、子どもが自由に考えたことが評価対象になるため、内心の自由を脅かしかねないとの懸念は根強い。学校独自に書式を決めることができる通知表には評価欄を設けず、授業での取り組みを保護者面談で伝えるだけにとどめて配慮する学校も出てきている。

【県内の中学校道徳教科書の採択予定日】

<7月>

18日 鎌倉市

19日 綾瀬市

20日 箱根町、真鶴町、湯河原町

24日 小田原市、厚木市

25日 座間市

26日 平塚市、大和市、伊勢原市、南足柄市、中井町、大井町、

    松田町、山北町、開成町

27日 横須賀市、海老名市、二宮町

31日 愛川町、清川村

<8月>

1日  横浜市、藤沢市

3日  三浦市、葉山町

7日  茅ケ崎市、寒川町

10日 相模原市

16日 逗子市

<未定>

県(8月上旬)、川崎市、秦野市、大磯町

今夏に採択される中学校道徳教科書(川崎での展示会から)

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