金属行人(7月18日付)

 7月上旬、平日の昼下がり。富士山の麓、山梨県の河口湖が終着駅の富士急行は、あいにくの雨天ながら、始発の大月駅で多くの観光客が改札に列をなしていた。外国から来た方々と察するのに時間はかからず、あれよあれよと車両には異国情緒が立ち込めた▼最も早く訪日外国人数が1千万人を超え、初の3千万人突破も視野に入る今年を象徴する動きとは過言か。全国区の名所のみならず、それらに通じる街や交通機関でも顕著になっているのかもしれない▼ひと声にインバウンド需要といっても、政府の公表値を除けば、なかなか定量的には計りにくい。鉄や金属の観点では、宿泊施設や店舗の新規案件に焦点が当たりがちだが、鋼製容器に代表されるように、外食産業や土産物といった最終消費者に近い分野でも影響は大きい▼今やSNSを通じた情報の拡散で、一大ブームが巻き起こることは少なくない。観光客にとっても選択肢が広い方がより充実した時間を過ごせるはずだ。今後の需要創出に向けて、今の流れを生かさない手はない▼前述の鉄道とて、車窓越しにシャッターが下りた商店や人気のない住居がちらほら。にぎわいが生まれている所でさえ、まだまだ知恵の絞りようがある。

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