五輪出場は希望薄もアジア野球が目指す発展 平坦ではない国際大会出場への道

6月に開催された「アジアカップ」はフィリピンが優勝【写真:豊川遼】

東京五輪の出場5枠入りを目指し、アジア諸国の挑戦がスタート

 2020年に開催を控える東京五輪では、球界の悲願だった野球競技が復活する。しかし、出場できるのは開催国の日本を除けばわずかに5チームのみの狭き門だ。それでも向上を目指すアジアの野球発展途上国は、国際大会に参加することをモチベーションとして野球を続けている。

 すでに発表されている東京五輪出場への残り5枠の決定方法は、2019年11月のWBSCプレミア12に出場するアメリカ大陸とアジア・オセアニア地域の最上位各1チームずつ。プレミア12への出場を逃した国々によるアメリカ大陸、アフリカ・ヨーロッパ予選の各優勝チームで4枠が決まる。

 そして最後の1枠はアメリカ大陸予選2位と3位、アフリカ・ヨーロッパ予選の2位、オセアニア予選優勝国、アジア選手権上位2チームの計6チームで争われる。その中でもアジア選手権の出場国は「アジア4強」と呼ばれる日本や韓国、チャイニーズタイペイ、中国以外はアジア東西地域での各予選を勝ち抜いた上位2チームずつが出場することになっている。

 アジア選手権予選を兼ねた「アジアカップ」は1995年から2、3年周期で行われてきたが、出場国の大会辞退などが相次いだこともあり、10回大会の2012年からはアジアを東西に分けて開催している。去る6月には香港で東アジアカップが行われ、香港をはじめ、フィリピン、タイ、インドネシア、シンガポールと5つの国と地域が参加しフィリピンが優勝した。

東アジアカップで知った参加チームが直面する現実

 アジア選手権には東西のアジアカップの開催国と優勝国が参加できるため、今回は香港とフィリピンが東京五輪へ向けての第一関門を突破したことになる。しかし、参加していた各チームはそれぞれの社会的事情や不安を抱えながら、やっとの思いで大会に出場していたのだ。

 香港で選手指導にあたっている宮野友宣氏は「香港では野球はロイヤルスポーツ。学歴社会の香港ではエリートの選手たちが多い。道具を揃えるためにお金がかかることから香港のすべての人がプレーできる訳ではありません」と話しており、日本のように誰でもプレーできる環境ではないことを強調した。
 
 また、シンガポールで野球普及に尽力し、代表監督も務める内田秀之氏は「シンガポールでは兵役があります。選手として大事な時期である19、20歳の時に兵役に行ってしまうためチーム編成が大変です。兵役に行けば、彼らはそのまま野球を辞めてしまうのです」と悲痛な思いを口にしている。

 このようにアジア各国では社会的問題を抱える中で選手たちはプレーしており、国際大会にはやっとの状態で出場している場合が多い。今回の東アジアカップの場合は東京五輪への第一歩という位置づけの大会でもあるが、現実的に五輪出場を叶えることは難しいだろう。それでも現地で奮闘する関係者や選手たちにとって、東京五輪や国際大会を目指すことは自国の野球の成長や競技自体を続ける1つの目標となっている。そして、考えるべきは五輪が終わった後どうするのか。日本も含めた世界の球界全体で、今後の発展のために次の一手を考える必要がありそうだ。

(Full-Count編集部)

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