ホンダ 新型クラリティPHEV│シリーズ第2弾はPHEV!見た目以上に走りを楽しめる、とても魅力的なクルマ

ホンダ 新型クラリティPHV

優れたパッケージングに、ライフスタイルに合わせて3種類のパワートレインが選択可能

ホンダ 新型クラリティPHV

非常に完成度の高い走りを実現していたにも関わらず、アコード PHEVを結局はリース販売のみに留めて、一般販売を行なわなかったホンダが、ようやく市販PHEVを登場させる。その名は「クラリティPHEV」である。

先に燃料電池車(FCV)の「クラリティ フューエルセル」として登場した同モデルを、ホンダはFCVだけでなく、プラグインハイブリッド(PHEV)、更には電気自動車(EV)の3タイプのパワートレインで展開する。「同じクラリティでありながら、地域のエネルギー事情や個人のライフスタイルにあわせてパワートレインを選択できる。」というのがホンダの描く戦略なのだ。

ホンダ 新型クラリティPHV
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クラリティの車体の美点といえば、やはり優れたパッケージングだろう。全長4915mmというサイズのセダンボディは、前後オーバーハングが長く、ボディも分厚くて、ホンダが言うようにオーセンティックなセダンの美しさがあるとはさほど思えないのだが、その代わりに燃料電池であれPHEVであれ、パワートレインをボンネットフード下に完全に収めることができる。

しかも、PHEVではリチウムイオンバッテリーを床下に配置することで、室内空間をまったく犠牲とすることのない効率的なパッケージングを実現しているのだ。

ホンダ 新型クラリティPHV
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実際、室内は非常に広く、前後席とも全方位に余裕たっぷり。特に後席は3人でも十分寛いで座れる余裕と、シックスライトキャビンならではの開放感で、まさに特等席となっている。

しかも、ラゲッジスペースは512リットルという大容量。ゴルフバッグを4セット、余裕で収納できる。しかも、6:4分割のリアシートバックを倒してトランクスルーとすることも可能だ。もっとも開口部は天地方向に狭く、あまり嵩張る荷物を積むのは難しい.スキーやスノーボードのような長尺物向けと見たほうが良さそうである。

バッテリー容量が大きく、日常の大半の領域をほぼEVとして使うことが可能

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フロントに搭載されるパワートレインは、40.5%という最大熱効率を実現した新開発の1.5リッター i-VTECアトキンソンサイクルエンジンと、小型・軽量化とパワーアップを両立させた、これも新開発の2基の電気モーター。システム全体での最高出力は184ps、最大トルクは315Nmを誇る。

外部電源からの充電が可能なリチウムイオンバッテリーの容量は17.0kWh。EV走行可能距離は、JC08モードで114.6km、WLTCモードでも101kmにも達する。充電所要時間は、CHAdeMO急速充電で80%まで約30分、200Vの普通充電では6時間となる。そして、EV最高速は160km/hをマークする。

つまり、日常の大半の領域をほぼEV同様に使うことが可能となる。しかも、PHEVは充電量が設定値を下回った時にもハイブリッド車として普通に走行可能なため、電欠の心配から解放されるというわけだ。

PHEVシステムの能力を最大限に引き出すために、ホンダ クラリティPHEVではドライブモードが3つ用意される。

EVドライブモードは、その名の通り電気モーターだけで走行。高負荷領域あるいはバッテリー残量が基準値を下回った時には内燃エンジンと電気モーターを効率良く活用するHVドライブモードに、そしてやはりバッテリー残量が少ない高速巡航時にはエンジンドライブモードとなる。

電気モーターの活躍する範囲が拡大した3つのドライブモード

ホンダ 新型クラリティPHV

その走りで注目は、やはりEVドライブモードだ。

アコードPHEVに対して圧倒的に走行可能範囲が広がって、普通の走り方ではエンジンがかかることはまず無い。しかも、ドライバビリティが素晴らしい。単にアクセルオンと同時に豊かなトルクが発生されるだけでなく、アクセル操作に対する力の出方がまさに思い通りという感覚で、とても扱いやすいのだ。EVとして見ても、とても上質な走りだと言っていい。

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専用のデジタルグラフィックメーターは、バッテリー残量などに応じて「ここから先でエンジンが始動する」というポイントをリアルタイムで示してくれるから、意図せずエンジンを始動させてしまうことは避けられる。

また、同様の機能を発揮するアクセルのペダルクリック機能も用意されているから、それらの力を借りながら、できるだけエンジンをかけない走り方をアジャストしていくのが楽しい。減速度を4段階調整できるシフトパドル型の減速セレクターも、リズミカルな走りに役立ってくれるはずだ。

ハイブリッドモードも内燃エンジンはあくまで発電用で、走行は電気モーターだけで行なう。よって、スムーズなドライバビリティはそのまま変わらない。必要に応じてエンジンが始動、停止を繰り返すことになるが、クラリティPHEVは入念な遮音対策のおかげで、いちいちそれに気付かされたり、気になったりということがほとんど無かったのには嬉しい驚きだった。

エンジンドライブモードは、今回の短いテストの中では、少なくとも入ったのを体感はできていない。それだけ電気モーターの活躍する範囲が広がっているのである。

見た目以上に走りを楽しめる、とても魅力的なクルマに仕上がっている

ホンダ 新型クラリティPHV
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シャシーの完成度も印象的だ。剛性感高いボディを土台に、アーム類をすべて軽量なアルミ製としたサスペンションがしなやかに動き、大きな入力に対しても安定感を保ち続ける。

ステアリング操作に対する反応が非常に素直なのは、リチウムイオンバッテリーを床下に敷き詰めた設計による重心の低さも効いているのだろう。率直に言って、見た目以上に走りを楽しめるクルマに仕上がっているのだ。

他にもクラリティPHEVは、スマートフォンを使って車両状況の確認やタイマー充電などの制御ができるアプリを用意していたり、災害時などに役立つ外部給電機能を標準装備していたりと、まさに見所豊富。満を持して登場の初の一般向けPHEVは、とても魅力的なクルマに仕上がっている。

課題があるとすれば、消費税込み588万600円という高価格だろうか。

先行するトヨタ プリウスPHV、三菱 アウトランダーPHEVのお値打ちとも言える価格設定と較べると、良くも悪くもインパクトは大きい。それこそ輸入車勢などとも戦うことになるだけに、ホンダがどのように潜在的ユーザー層にアピールしていくかは興味深い。せっかくの一般販売開始だけに、しっかり、大事に育てていってほしいところだ。

[レポート:島下 泰久/Photo:茂呂 幸正]

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