ETRC:第4戦スロバキアは今季初優勝のメルセデス・トラックス含む4人の勝者が誕生

 7月14~15日にスロバキアリンクで開催され、急遽組み込まれたWTCR世界ツーリングカー・カップとの併催イベントとなったETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップの第4戦は、土日の予選ともに現王者のアダム・ラッコ(フレートライナー)が速さを見せたものの、週末4レースすべてで異なる勝者が誕生する大混戦となった。

 土曜オープニングレースに向け幸先良くポールポジションを獲得したバギラ・インターナショナル・レーシング・システムズのエースは、唯一のボンネットキャブ型ヘッドとなるフレートライナーで1コーナーを目指したものの、王者らしからぬスタートミスでまさかの失速。

 代わって首位に立ったのは、トラックスポーツ・ルッツ・ベルナウのMANをドライブするアントニオ・アルバセテで、2番手にはシリーズの”レジェンド”であるヨッヘン・ハーン(IVECO)が続き、遅れたラッコはさらにサッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ/MAN)にもオーバーテイクされ4番手に後退する苦しい展開を強いられる。

 一方、4度のタイトル経験者ハーンからの執拗なプレッシャーにさらされ続けた先頭のアルバセテだったが、踏ん張りを見せ8周にわたっての攻防を耐え抜くと、終盤にはハーンがわずかにミスを犯してバックオフしたことにも助けられ、1秒087差を守ってのトップチェッカー。見事に今季2勝目を飾った。

 2位ハーンに続く最後の表彰台には、王者の意地を見せ終盤にレンツのMANを再逆転したフレートライナーのラッコが滑り込み、現役チャンピオンの面目を保つリザルトを確保した。

 しかし、続くセミ・リバースグリッド形式のレース2では、スタートでアンドレ・クルシム(Don’t Touch Racing/IVECO)と絡んだ王者ラッコが、ターン1アウト側のグラベルに落ち早々に戦線離脱。

 その波乱も助けとなり、レース1で8位、リバースポールから出たイギリス人のシェーン・ブレアートン(TORトラック・レーシング/MAN)がライト・トゥ・フラッグの完勝劇でうれしいETRCキャリア2勝目を挙げている。

 続く日曜のレース3に向け、ふたたびスーパーポールで最速タイムを叩き出したラッコのフレートライナーは、週末初勝利に向け最前列から挑み、前日の反省を活かしてホールショットを決めるも、オープニングラップの最終コーナーで”レジェンド”が一閃。

 ハーンがラッコの前に出ることに成功し、そのまま老獪なディフェンスで今季6勝目をマーク。前人未到、自身5度目のタイトル獲得に向け、現役王者を直接下しての価値ある勝利となった。

 そして最後の3位表彰台にはシュティフィ・ハルム(チーム・シュワーベン・トラックス/IVECO)が立ち、彼女とレース全周にわたって激しいバトルを繰り広げたチーム・タンクプール24のエース、メルセデス・ベンツ・トラックスのマシンで奮闘するノルベルト・キスは4位に入るも、チェッカー後に160km/hの最高速違反のペナルティを受け6位に沈むこととなった。

 しかしこのペナルティが功を奏したか、週末最後のレース4ではセミ・リバースグリッド方式により3番グリッドからのスタートとなったキスは、ポールシッターのチームメイト、ステファン・ファース(メルセデス・ベンツ・トラックス)を早々にかわすと、前を行くレネ・ラインアート(チーム・ラインアート/MAN)を追走する展開に。

 8周レースの折り返し点となる4周目を終えたところで、ブルーのMANを捉えた12.8リッター直列6気筒ターボディーゼルを搭載するメルセデス・ベンツ(レーストラックス・アクトロス)は、1080馬力、5000Nmのパワーを活かしてすぐさまオーバーテイクを決め、そのままレースをコントロール。2度のタイトル獲得経験を持つキスが、待望の今季初優勝を飾ってみせた。

「レース3のペナルティもあって最高の週末とはいかなかったけど、こうして今季初勝利が決められて、グリッド降格が吉と出たね。スムースに僕を前に出してくれたポールシッターのチームメイト、ステファンにも感謝したい」と、喜びを語ったキス。

 最終的に2位のラインアートも最高速超過で10秒加算のペナルティを受け7位に後退し、スロバキア最終レースはレンツ、クルシムの表彰台となっている。

 これで前半戦を終え、ETRCのトラッカーたちも夏休みに突入。シリーズ再開は新学期となる9月1〜2日のモスト戦となり、チェコ出身の王者ラッコにとって負けられない地元レースとなる。

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