中日松坂の復活は「まだ喜んではいけない」 山崎武司氏が評価しないワケ

中日・松坂大輔【写真:荒川祐史】

前半戦は期待を超える活躍も「チームに迷惑をかけている部分がある」

 中日の松坂大輔投手は今季、新天地で復活を遂げた。前半戦は7試合登板で3勝3敗、防御率2.41。「平成の怪物」のスター性は抜群で、オールスターにはファン投票のセ・リーグ先発投手部門トップで選出された。全盛期からスタイルは変化したものの、経験を生かした投球術で失点を最小限に抑え、試合を作っている。

 現役時代に通算403本塁打を放った強打者で、中日OBでもある野球解説者の山崎武司氏は「期待以上のものは出しているんじゃないかな。頑張ってくれている」と評価しつつ、「まだまだそれで喜んではいけない」と指摘する。復活を手放しで喜べないのはなぜか。

「チームに迷惑をかけている部分がある。個人プレー、個人競技だったら松坂大輔の価値は生きるんだけど、試合開始直前に登板回避したり、そういうアクシデントが2回ある。藤嶋が勝ったからいいものの、負けていたら……ということになる。自分の投げる責任は果たしてほしい。評論家として『勝て』とは言わないけど、全うできるものはしっかりやってほしいなと思って見ている」

 松坂は6月17日の敵地・西武戦で先発予定だったが、試合開始直前のブルペンで背中の軽い捻挫というアクシデントに見舞われ、登板を回避した。代わりに先発した藤嶋健人が好投して中日は勝利したが、山崎氏はチームへの影響は大きかったと指摘する。松坂は5月13日の敵地・巨人戦でも3回途中に異変を訴え、緊急降板している。

「ああいうことがあると、周りがソワソワしちゃう。松坂だけのことで投げる、投げないで終わるならいいけど、誰かを代わりに投げさせないといけないわけだから。それがチームプレーだし、松坂がレジェンドだから許されるかといったら、それは違うというところなので。そのへんだけ気をつけてほしい」

 試合直前での登板回避や序盤での緊急降板について、厳しい見方をしている。では、肝心の投球内容はどうか。自らの四球などでピンチを招きながらも、要所は抑えて得点を許さないというピッチングが続いている。

「やっぱりばらつきはあるけど、そんなものだと思えばそんなもの。彼の持ち味だといったら持ち味だし、最後のトドメを刺されないから。でも、何回も同じことをやっていると、プロは必ずまた大事なところで打たれだすから。そのへんは本人も考えてるんじゃないかなとは思うけど」

 走者を背負いながらも、傷口を広げず、ゲームを作る。これはやはり圧倒的な経験値によるところが大きいのか、それとも、何か違う理由があるのか。山崎氏は、それについてはまだ判断しかねているという。

中日OBの野球解説者・山崎武司氏【写真:岩本健吾】

「今のところはBクラス、借金生活だから。別に変わってない」

「そのへんなんだよね。経験値なのか、たまたまなのか。そこは正直、今のところは評価しにくいところがある。みんな、松坂についてはいいことしか言わないから。でも、オレは手のひらを返したくないし、彼が7勝、8勝して『やっぱり松坂すげえな』ってなると思うけど、そのなかで色々な(周囲の)手助けがあったり、しわ寄せを食ってる人のことを考えないといけない。だから、『ちゃんと投げる日には投げる。全うしなきゃいけないところは全うする。その結果としての勝ち負けは二の次』。そういう責任を果たしてほしい。それだけだね。あとはいい効果を生んでるわけだから。球団にとっても、お客さんが増えたし。

 彼がこれまでにやってきたキャリア、経験を後輩たちに伝えていくというのはいい効果だと思うから、そのへんもやっていってほしいよね。ただ、大輔が来て、ドラゴンズがAクラスになったというならいい効果だけど、今のところはBクラス、借金生活だから。そうなると、別に変わってないんじゃないかなと思う」

 では、後半戦に松坂がやるべきことは何か。「勝ち負けは二の次」とは言うものの、結果を度外視していいということではない。しっかりと責任を果たせば、勝利はついてくると山崎氏は考えている。

「1軍だから当然、勝ちというのは拾ってほしいけども、彼が先発ローテで投げられるというのは、彼が健康に投げられているということだと思うから、必ず勝数は増えていく。ただ、評論家として『勝て』『なんで勝てないんだ』と僕らが言うのはおかしい。1年間これで中10日でも投げきっていければ、さらに3つくらいは(白星が)ついてくるんじゃないかなとは思うけどね。

 自分が投げられる、いい状態の時に投げてもいいと言われてるだけだから、登板感覚を詰めろとも思わない。今日投げられる、万全で投げられるというところ、監督が『投げなさい』というところでしっかりと投げて、結果を出してほしい」

 そして、何よりもその結果として中日がチームとして結果を残すことで、松坂大輔を獲得した意味が出てくるという。山崎氏は言う。
 
「それがやっぱり“松坂効果”じゃないの? そう思うけどね」(Full-Count編集部)

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