「不思議の国のアリス」題材にダンス作品 相模原出身の森山さん演出

 相模原生まれのダンサー森山開次が、ルイス・キャロルの名作「不思議の国のアリス」を題材にしたダンス作品を演出している。子どもから大人まで楽しめるKAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区)のキッズ・プログラムの一環。「アリスの冒険のように、ウサギに導かれ穴に落ちるようなつもりで見てもらえたら」。独自の仕掛けで、観客を非現実的な世界へといざなう。

 「キャロルはこの物語を子どもたちに語り聞かせた。僕たちは体で踊り聞かせるように表現する」。世界中で愛される著名な作品を、いかにオリジナリティーあるものに仕上げられるか。それは森山にとって一種の挑戦でもあった。

 「不思議の-」は昨年のキッズ・プログラムでも上演した人気の舞台。NHK教育の番組「からだであそぼ」の出演を機に、子ども向け作品の創作にも意欲を見せてきた森山。自身が手掛けるアリスの世界に登場する、遊び心満載のダンサーの姿に注目してほしいという。

 「遊びっぷりを見てほしい。大人が本気で遊ぶ姿から、未来を生きる子どもたちに何かを感じ取ってもらいたい」。静かに、真っすぐな目で語る。

 作品は、子どもに限らず大人をも魅了するクオリティーだ。出演者は森山を含め6人。海外でも評価され、高い表現力と技術力を持つメンバーが、身体表現と言葉遊びを融合させた摩訶(まか)不思議なアリスの世界を創り上げる。300人を超えるオーディションから選ばれたアリス役のまりあが醸し出す純真なさまも、見どころの一つという。

 原作で好奇心の赴くままに冒険するアリス。夢の中でさまざまな旅をするという感覚は、劇場に足を運ぶ観客の足取りにも重なる、と森山は感じている。

 幕開けと同時に不思議な夢が目の前で繰り広げられる心地を覚え、劇場を出るときに目が覚める。「その夢から覚めた後に、皆さんの生きる世界がより鮮やかになっていたら。何かしらの影響や変化を感じてもらえたら、舞台をつくる意味がありますね」

 特に子どもの反応は正直だ。「子どもに語り聞かせるとき、キャロルも必死だったと思う。飽きさせないよう、僕たちもあの手この手で最高の技術を見せていきたい」。原作者に自らを投影しながら、力を込めた。

昨年のキッズ・プログラムで上演した「不思議の国のアリス」の一場面(撮影:宮川舞子、KAAT提供)

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