金沢の主将、亡き母にささぐ一打 高校野球南神奈川大会4回戦

 第100回全国高校野球選手権神奈川大会第10日は21日、サーティーフォー保土ケ谷球場など4会場で南神奈川の4回戦8試合を行い、第1シードの横浜や金沢、鎌倉学園などが勝利し、8強が決まった。

 横浜は万波中正(3年)の投打にわたる活躍などで藤沢清流を七回コールドで退け、鎌倉学園も茅ケ崎をコールドで下した。金沢も横浜桜陽に快勝し、公立で唯一ベスト8に残った。藤嶺藤沢は第1シードの湘南学院を破った。実力校同士の対戦となった横浜商-星槎国際湘南は、星槎に軍配が上がった。

 第11日は22日、同球場など4会場で北神奈川の4回戦8試合を行う。

▽4回戦(サーティーフォー保土ケ谷)

横浜桜陽

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金沢

【評】投打のかみ合った金沢が快勝した。五回に3短長打などで4得点し突き放した。ベースカバーの遅れを逃さない隙のない走塁も光った。主戦田中翔が1失点の力投。横浜桜陽は五回途中から救援した藤森が粘ったが、好機であと一本が出なかった。

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 甲子園に行くまでは、何があっても負けられない。天国の母に、最高の報告をしたいから-。

 第1シード金沢の主将堀井は、3-0の五回1死一、二塁でも「とにかく後ろにつなぐ」気持ちだった。ファーストストライクを思い切り振った打球は左翼の頭上を越え2者が生還。18年ぶりの8強をたぐり寄せた。

 金沢に入学した春。母・須美さんが44歳の若さで亡くなった。乳がんだった。小学3年生で野球を始めてから、ずっと支えてくれた。悲しみに暮れたが、すぐに決心した。「野球部を辞め、アルバイトをして家族を助けよう」。妹もいる。兄としての義務だと思った。

 須美さんは生前、家族一人一人へのメッセージをしたためたノートを残していた。堀井へは、こう書かれていた。「不安で気持ちが暗くなったら、翼(堀井)らしくない。野球は続けて下さい」。大好きな野球に打ち込む。それが、母への恩返しだと気付いた。

 堀井家は全員が阪神ファンだが、甲子園に観戦に行ったことは一度もない。「阪神の応援に行く前に、あいつが連れて行ってくれる」と父・一美さん(45)。

 家族の夢がかなうまで、あと3勝。堀井は、母の仏壇に手を合わせる。「必ず甲子園に行けるように、頑張ります」 

横浜桜陽、16強達成し胸を張る

 「ベスト16の目標は達成できたので胸を張りたい」。一矢報いた横浜桜陽の主将愛甲はすっきりした表情で振り返った。八回無死一塁で金沢の主戦田中翔の直球を振り抜き、左中間に適時二塁打。チーム唯一の得点をもぎ取った。

 昨夏は1回戦負け。新チーム発足時に歴代最高の16強を目標に掲げてきた。「1年でここまで成長できた。チャンスで打てるチームをつくってほしい」と後輩に託した。

【金沢-横浜桜陽】5回裏金沢1死一、二塁。堀井が左越えに適時二塁打を放ち5点目を挙げる=サーティーフォー保土ケ谷球場

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