【高校野球北神奈川】東海大相模、主砲一振り窮地救う

 第100回全国高校野球選手権神奈川大会第13日は24日、横浜スタジアムなどで北神奈川の準々決勝4試合を行い、いずれも第1シードが勝利し、横浜商大は12年ぶり、桐光学園は4年連続、東海大相模は2年連続、慶応は2年ぶりのベスト4進出を決めた。

 選抜大会4強の東海大相模は九回に森下翔太(3年)が同点の2ランを放ち、井上恵輔(2年)の内野安打で県相模原に9-8でサヨナラ勝ち。横浜商大はサヨナラの押し出し四球で白山に2-1で競り勝った。慶応は桐蔭学園に6-4、桐光学園は10-7で弥栄を下した。

 25日は試合がなく、第14日は26日、同スタジアムで南神奈川の準決勝2試合を行う。

▽準々決勝(横浜スタジアム)

県相模原

500 000 300|8

010 040 013x|9

東海大相模

 【評】ノーシードの県相模原が第1シード東海大相模を相手に健闘した。初回に高めの球を逃さず5連打を含む6安打で5点を奪い、追い付かれた後の七回は先頭及川の二塁打を皮切りに4安打。敵失も誘い3点を勝ち越した。東海は吉田の2ラン、代打上杉のソロ、九回の森下の2ランと一発攻勢で追い付き、なおも1死満塁から井上の内野安打でサヨナラ勝ち。2番手の主戦齋藤が二~六回を無安打に封じ、流れを取り戻した。

◆劇的逆転サヨナラ

 そのバットから快音が響いた瞬間、誰もが「それ」と分かった。

 最終回。まさかの2点ビハインド。絶体絶命の窮地で東海大相模の主砲森下が放った打球が、横浜スタジアムの無人の左翼席で大きくはねた。2戦連発の高校通算57号は同点2ラン。一振りでタテジマを救った。

 「心は熱く、頭は冷静に」-。そう言い聞かせて打席に入った。初回に5失点。直後の打席は1年から4番に座るスラッガーですら「足ががくがく震えた」。3点を追う八回2死から代打上杉のソロで反撃ののろしが上がり、「あの一発に勇気づけられた」という。

 次は自分が、ナインに勇気を与える番だった。1ボール2ストライクから、落ちる変化球を捉えた。だが、まだ同点。走りながらベンチの仲間たちに大きくガッツポーズしたのは「もっと盛り上げよう」という気持ちからだ。最後は8番井上が執念の内野安打で、サヨナラを決めた。

 「センター方向へ低い打球」と、つなぐ意識を徹底するナインだが「究極の場面ではホームランも必要」と森下は言う。春季関東大会の埼玉・花咲徳栄戦で、劇的なサヨナラ弾を放った時と同じ頼もしい言葉だ。

 「もう自分たちは一度死んだ身。反省すべきところは反省し、最後までアグレッシブを貫きたい」。北神奈川の頂点、その先の日本一まで、夏は終わらせない。

◆「内容弱い」厳しい表情 東海門馬監督

 劇的な逆転サヨナラ勝ちも、喜んでばかりはいられない。試合前、この準々決勝を「心の勝負」と説いていた東海大相模の門馬敬治監督(48)は「勝って強いという結果は残したが、展開、内容は弱い」と厳しい表情で振り返った。

 「想定内とは言い聞かせているが、やはり想定外のたくさんのミスがあった」。初回の5失点目の暴投や、七回の中継の乱れ、ファウルフライを取り損なった場面。闘将は「自分たちのふがいなさが出た試合」と、この勝利を総括した。

 初回の5失点はセンバツ4強のタテジマでも、やはり焦りを生んだか。5打数無安打の主将小松は「一本出せないのは自分の弱さ。焦りもあったと思う」とし、七回に3点の勝ち越しを許したエース齋藤も「勝負どころで甘い球を放ってしまった」と反省した。

 それでも土壇場で試合をひっくり返し、トーナメントもいよいよ佳境だ。門馬監督は「意地を見せたと思う。負けなかったことが全て。生き残ったので、これでリセットできる」と強調した。

【東海大相模-県相模原】9回裏東海大相模無死二塁。同点の2ランを放ちガッツポーズで一塁を回る森下と大喜びの東海大相模ベンチ=横浜スタジアム

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